逢いたい気持ち


 
「あー、糖分が足りねぇ」


 そうボヤいたのは勿論、万事屋銀ちゃんこと、坂田銀時である。銀時はソファに寝転がり死んだ魚のような目で天井を眺めていた。


「糖分だ糖分。早くいちごミルク持って来やがれー」


 と言ってみるものの、誰もいない。神楽と新八が出かけて行ったのはつい先刻のことである。そのことを思い出した銀時はめんどくさそうにのそり、と起き上がると冷蔵庫の前へと歩いて行った。





【逢いたい気持ち】





 冷蔵庫を開けてみるも、そこに入っているものは何にもなくて……


「なーんで何にもねぇんだ?」


 頭を掻きながら言った時、ピンポーン、と軽快なインターホンの音が鳴った。


「はーい。誰ですか?何かご用でしょうかぁ?」


 なんとも面倒くささを露わにしている態度で言う。ガラッと戸を開けて、そこにいる人物に目を向ける。銀時は目を向けた後、思いもよらない人物がいたことに目を見開いた。


「何だよ。そんな驚くこたぁねぇだろ」


 くわえ煙草で目の前に立っている男は紛れもなく土方だった。銀時が言葉を失っていると、土方の方から口を開いた。


「邪魔するぞ」


 そういうなり銀時の返事も聞かずに、ズカズカと上がり込む。


「あっ…おいっ何勝手に上がり込んでんだよ!!」


 はっと我に返った銀時が土方を止めようとする。が、それは叶わなかった。


「何しに来たんだよ」

「ただ暇だったから来たんだよ」

「だ〜か〜ら〜、何の用で来たのか聞いてんだよ」

「別にいいだろ、そんなの。俺が来ちゃいけねぇ理由でもあんのかよ」

「ねぇけど…」

「ならいいじゃねぇか」


 それから小一時間の間、土方と銀時は何気ない話をしていた。
 そして夕刻。ガラッと戸を開けたのは新八だった。その後ろには神楽の姿もある。


「銀さん。買って来ましたよ!!特大いちごミルク!!探してきたんですからね、感謝して下さいよ!」


 息を切らし、怒りながら声を張り上げて言う新八。それもそのはず、新八は特大いちごミルク(普通の20倍はある大きさ)をわざわざ買いに行かせられていたのだ。


「おー、ご苦労さん」


 さしてご苦労ともひとかけらも思っていないような口調で新八に声をかける。神楽はというと、定春の散歩に行っていたようで、定春に繋いであるリードを手に握っている。と、新八は土方が来ていることに気づく。


「あ、土方さんやっぱり来てたんですか」


 新八の言葉に銀時は頭にクエスチョンマークを飛ばす。何でやっぱりなんだ?と問うと、新八が応える前に土方がいきなり立ち上がった。


「何だよいきなり」

「帰る」

「あ?…あぁ」


 土方が出て行くのを見送ったあと、銀時はまたさっきと同じ質問をした。
 土方の顔が若干赤くなっていたのは…気のせい、か?


「出かけた時に会ったんですよ。それで銀さんが今万事屋に一人って言ったらすぐに別れを告げて行ってしまったんで……ここに来てんのかなって思ってたんですが、案の定でしたね。…………って何顔真っ赤にしてんですか!!!」


 銀時は耳まで真っ赤にして右手で顔をおさえた。


 ……あいつ…わざわざ俺に会いに来てくれたのか?いや、でも……


 色んなことを考えていくたんびにどんどん顔は真っ赤になっていく。


 二人きりでめったに会えないからか……?ならもっと楽しんでいたのに……。何気ない話しするんじゃなくて…もっと……


 今更後悔しても意味がない。









 なら、








「今度は俺が会いに行ってやっか」





―end―








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