朽木姉 過去 | ナノ

大人になりたいと思っているうちは大人ではない


(8/23)




「よォ、副官章似おうてるやないか」

「真子…」


当主になりたくない、なんて弱音を吐いてしまった以来なので、副隊長になった今、真子に会うのは罰が悪い。なんて返せば良いのかもよく分からなくて結局押し黙ってしまった私に対して、真子はニヤリと口元を歪めて私の頭を乱雑に撫でた。

「頑張ってるみたいやん、副隊長も、当主になるための銀嶺の爺さんからの扱きも」

「白哉を守りたいって思ったから覚悟決めたんだよ」

「悪い?」と付け足すと、「ええんやない」と返される。「相変わらず言葉遣い悪いのォ」とか何とか付け足されながら。

それでも。やっぱり真子は大人なんだと実感させられる。いつも私が弱音を吐くと叱って、突っ撥ねる癖に、いつの間にかスルリと普段通りの距離に居て、嫌な顔せず相談相手をしてくれる。私が夜一と仲がいいのは大貴族の繋がりで、私の悩みを理解してくれるからだけれど、真子にも悩みを相談できるのは彼自身の優しさからだろうと思う。



「そういえば…惣右介くんって真子の隊だよな?」

「……何や雪音、知り合いか」

思い出したようにそう尋ねると、真子の目の色が冷たいものに変わった。そんな瞳をする真子を見るのは初めてで、知らない人みたいだ、と思いながら「お爺様に惣右介くんのお話聞いたんだよ」と返す。婚約者の候補として彼の名前が挙がっている、とはとても言える空気ではなかった。


「…アイツを今度副隊長にしたろ思てる」

「へぇ、強いんだ、彼」

「……まぁな」

含みのある肯定に首を傾げたが、それを尋ねたところで教えてくれるような相手でないことは分かりきっている。真子の副隊長は先月殉職したばかりで、とても腕のたつ人だった。そんな副隊長の後任に彼を選ぶのだ。藍染惣右介という男は相当の切れ者なんだろう、と思いながら迫って来た霊圧を俊敏に察知して「やっば!!」と叫ぶ。



「海燕こっち来るわ!!じゃあね真子、真子も見つかんないように!」



と早口で捲し立てて瞬歩で六番隊隊舎に戻る。帰ったら書類仕事に精を出して私を探しに戻ってきた海燕に「サボり??」とか何とか言って煽ってやろう。海燕の怒り狂う顔が目に浮かんで、私は1人ほくそ笑んだ。





 
- ナノ -