覚悟を孕んだ一歩目
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「目が覚めたか」
「……お爺…様」
目を開けて、霞がかった視界の中で見えたのはお爺様だった。何が起こったのか、どうして自分はお爺様に見つめられていながら眠っていたのか、上手く状況理解が出来ない私に、「今、白哉を呼んでくる」と、お爺様はいつもと変わらない口調で言った。
ここが朽木邸であること、自分は任務の最中に虚からの深手を負ったことに気付くのに、恐らく数刻を用いた。
そうこうしているうちに、慌てて駆け付けてくれたらしい白哉が、息を切らして「姉上!」と、私を呼ぶ。
(そうだった…)
(私は…)
決めたのだ。
虚からの傷を負ったその瞬間。
もし、生き永らえることが出来たなら、
十三番隊を辞めよう、と。
「白哉、心配してくれて有難う」
そんな事!姉上のお怪我に比べればどうってことありません!と、否定する白哉だが、礼を言われたことへの喜びが隠せないのか嬉しそうにニコニコと笑っている。
私はこの笑顔を、守ろうと決めた。
「お爺様…私を、六番隊副隊長に任命して頂けませんか」
唐突な申し出に、お爺様も「何故か?」と私に尋ねられる。当たり前だ。今まで散々、嫌だ、絶対にならないと悪態をつき、拒否し続けてきた私なのだから。
「私は、この命尽きる時、自分の為の人生ではなく、人の為に何かを成し得たと胸を張って言いたいと思いました」
「朽木家の当主として、生きていきたいと思いました」
「今まで散々我儘を言ってきた身で、虫の良い話だとは思います」
「ですが…どうか、私に次期当主としてのご教示を頂けませんか」
お爺様に、頭を下げる。
傷を負った腹部が、ジンジンと痛んだけれど、気にはならなかった。
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