朽木姉 過去 | ナノ

癖というより習性


(13/23)




「えー、私が尻拭い役なのー??」

「なァにがえー、だ!」

「お前が提案したんだから当たり前だろ!」とスパァンと頭を叩かれる。海燕相変わらず容赦ねぇな、と思いながら「へいへい」とその書類にサインした。

先日提案した霊術院でのダミー虚を用いた戦闘訓練に関して六回生が引率を行うというものは、可決されたとお爺様から報告を受けた。但し、緊急事態が起こった場合その対処をするのは六番隊で、しかも私が責任者となってしまった。まぁ、私が提案したから仕方がないとはいえ、多少面倒臭いのは事実だ。


「海燕責任者になれよ、副隊長命令!」

「馬鹿な事言うな、馬鹿が」

「なっ!!!てめぇ副隊長に馬鹿は無いだろ!!!」


そう言って掴みかかろうとすると「貴族でありながらその喋り方は無いだろう??」と瞬歩で現れたお爺様に窘められた。「ゴメンナサイ…」と謝ると、やれやれと呆れたように「雪音は当主としていい線いってきたんじゃが、言葉遣いは直らんな」とぼやかれる。

これでも最近少しはマシになってきたと自負していたけれど、確かに桃色や藤色の着物を着て年中屋敷でまり付きしているような娘に比べれば酷い言葉遣いに変わりないだろう。だからといっていきなり海燕が叱責してくる度「まぁ」と口に手を当てて微笑む器の大きい娘にも、夜一にからかわれて「そんな事仰らないでくださいませ」と頬を赤らめる可愛らしい娘にもなれるはずがない。


おまけに婚約者である惣右介にもこの言葉遣いだと分かれば、お爺様は泡を吹いて倒れるだろう。絶対に秘密にしよう。と心に決めて、「サインしたからこれ1番隊に回してきてください、志波三席」とできるだけ丁寧な言葉遣いで頼むと、なんとも言えない不気味なものを見るような顔をした海燕にその書類を奪われてサッサと瞬歩で消えられた。


「お爺様〜海燕三席から外してください〜」

「雪音が突っかかる癖が抜ければ良いのじゃ」と相変わらず窘められて、私ははぁ、と机に突っ伏す。副隊長になってからというもの、ろくに休息を取っていなかったせいかそのまま眠ってしまった。







 
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