朽木姉 過去 | ナノ

親の心子知らず


(12/23)





「霊術院でのダミー虚を用いた戦闘訓練に関する提案」

六番隊から回された書類の太字にはそんな文字の羅列がなされ、その内容は下級生の戦闘訓練に六回生が引率するという新しい形式を提案していた。

教員が引率をするにも、時間がない。それならば六回生が引率をし、特進クラスに霊術院に居ながら戦闘体験を与え将来の有望株をより早く、より強く育てあげるというもの。もちろん六回生にもメリットはある。将来隊長格の仲間入りをする場合は下級生を束ねて指示を出した経験は必ずメリットになる。

100年後には当たり前となったこの企画は、当時は大きな革新だった。そしてその革新の提案者の欄に綴られたのは見慣れた朽木雪音の文字。


「やるねぇ、雪音ちゃん」

「あいっかわらず雪音には甘いなぁ!アンタ!」

「やだなぁリサちゃん。親心ってやつだよ」


そう言いながら、八番隊と書かれた空欄にサインする。既に三、四、五、十一のサインを得ていることから(十一番隊はろくに見ても居ないだろうが)この提案は通るだろうということが安易に伺える。彼女は幼い頃から瀞霊廷を遊び場にし、隊長格とも親しい関係を築いていた。親心なのだろう、三番隊のサインの横に副隊長が書き足したらしい親指を立てたイラストと、五番隊のサインの横にある、やるやんけという走り書きに思わず自分も自身のサインの横に立派になったねぇと感想を添えた。

かつて霊術院にもまだ行ってなかった頃、浮竹と雪音の元を訪れ、みみずがのたうち回っているような下手くそな文字を解読したら、しゅんすいだいすきと書かれており、「おてがみ!」と笑って差し出してきた時の感動は忘れまい。

そんな雪音がこんな綺麗で達筆な字を書くようになっただけでも泣いてしまいそうなのに、こんなに革新的な提案をするとは。



「やっぱり親心ってやつだろうねぇ」


1人感傷にふけりながら、「リサちゃーーん!この書類、九番隊に渡して来て〜!!」と叫んだ。









 
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