ピースが揃う事が幸せとは限らない
(10/12)
「君の妹」と言った。私と兄様を、守るように立つ雪音に向かって。
兄様は、私を庇い血を流している。雪音は、重苦しい、だけどどこかで感じたことのあるような霊圧を纏っている。何が何だか、よく、分からない。
「困惑しているね、朽木ルキア」
藍染隊長が、私を見て、目を細める。私はそれに、なんと返事をすればいいのか、いや、返事をしないことが正解なのか、よく分からない。
「君の目の前に立つこの死神は、朽木雪音」
「霊術院をわずか1年で卒業し、次期総隊長候補とまで言われた、元六番隊隊長」
「そして、先代朽木家当主だ」
「そんなに褒めるなよ」と皮肉混じりに言う雪音に対して、驚きと、困惑で、私は声が出なかった。先程から藍染隊長が零す事実に、頭の整理が追いつかない。
でも、雪音に感じていた違和感が、パズルのピースを嵌めるように姿を現す。
知らない筈なのに、どこか感じたことのあると思った霊圧は、兄様ととてもよく似ている。
言葉遣いも行動も粗暴なのに、ふとした所作に気品が漂っていたり。私の自己紹介に、一瞬驚いた表情を見せた理由も、今なら分かる。
でも。
「なら何故…雪音は現世に……」
何故、大貴族、朽木家の当主にまでなった死神が、現世を拠点にしていたのか。
「彼女は100年以上前、私の策略に気付いた。いや、正確には彼女と浦原喜助は、だが」
「だから罪を被せて大罪人とした。それだけだ」
「何か間違っていたかな?雪音」
薄ら笑いを浮かべた藍染隊長が、雪音を見やる。「何一つ間違って居ないけれど、ちょっと喋りすぎじゃないかしら」と、返答して、藍染へと斬り掛かった。
「おー、互角やん、雪音隊長と藍染隊長」
市丸隊長が、感想を零す。確かに、先程とは違い藍染隊長も抜刀しているし、時折刃がぶつかる音も聞こえる。
「でも、藍染隊長は本気出してるようには見えへんなァ…まァ雪音隊長も本気ではなさそうやけど」
市丸隊長がそう言ったとほぼ同時。藍染隊長の腕から、血が溢れる。「さすがだ」と、そう零した藍染隊長の声が鼓膜を掠める。でも、次の瞬間、藍染隊長の鏡花水月は、雪音の腹に深々と刺さっていた。
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