VCE0110
「殺すのか…」 「海還りをすれば、神さまが救いにきて下さる」 「やめろ、俺を殺さないでくれ…過去を殺すな!」 「あなたは死なないの。罪を洗われて、神さまの下へ行くのよ」 「言っても無駄か…お前は使われてるにすぎない」 「業があなたを汚しているの」 「俺がおかしいのか?あの女が狂っているのか?…知らなければよかったんだ、こんなこと」 「どうか彼をお救い下さい。お導き下さい。許してください」 「やめろ!俺は、あんなものに救われたくなんかない!やめてくれ…」 「…」
「殺せよ…お前の言葉を聞いていると、頭が…脳がおかしくなりそうなんだ!」 「大丈夫。清流に御身を任せれば、心の乱れを穏やかにすることでしょう」 「眞魚川…ふん、どこへ続いてるんだろうなあ?」 「神さまの大いなる母胎より出でて、現世へ至っているのです」 「気持ち悪い…」 「命を包み、穢れを落として…神さまに還るの」
「もう、これで最後にしてくれ…お前はどうして、会ったこともない神を信じられるんだ?」 「神さまを疑うの?」 「存在すらわからんじゃないか」 「あなたは、大切な人がいますか?」 「いるさ…お前と違ってな」 「じゃあ、本当にその人が存在しているのか、今、私に証明して下さい」 「なに?」 「本当にその人はいるの?生きてるの?言葉だけじゃ、わからないです」 「…」
「万物の存在は、記憶じゃなくて、記録で刻まれるんです。神さまは、記録されてる…頭の中に記録された瞬間から、そこに神さまがいるの」 「…それが君の言葉か」
「あなたが、神さまの下へたどりつけますように」
prev ◎ next
|