バルバッド編-08
「バルバッドの貿易の権限はすべて…煌帝国に渡すことにしたからでし!」
「……………!?」
「だから煌帝国が貿易を許可しない国とは貿易できないんでし」
鈍器で頭を強打されたかのような気がした。
慌てて頭の中を整理する。
アブマド王は何と言った?
煌帝国が認めない限り貿易をする気はない、と。
つまりそれは、バルバッド王国の通商権を煌帝国に譲った、否、売ったということ。
ということは…
「それは…我がフリーア王国とバルバッド王国は貿易をしないということですか?」
「え?あ、いやレン王女…そういう訳では…」
「同じでしょう?貴方は煌帝国に通商権を売った、ということですよ?」
「こ、煌帝国にフリーアとは貿易を続けさせて貰うよう頼んでみるで――」
「それでは駄目なのです!フリーアが交易国として貿易するのは煌帝国ではなくバルバッド。煌帝国と貿易するのでは意味がない!」
とんでもないことになった。
これは婚約祝いだの言っている場合ではない。
フリーア王国とバルバッド王国との交易は、バルバッド建国時より始まり今に至る。
更に、バルバッド先王の姉妹である私の母や、ナハルとラティーシャ姉様の母君がフリーアに嫁いだことにより、その関係は一層深まっていた。
どうしたらいい?
このままバルバッドが煌帝国の支配下に置かれるのを黙って見ている?
それとも、伝令を飛ばしてバルバッドで待機?
いや、何かやるべきことが私にもあるはずだ。
「あ…そ、そのレン王女―」
「……私たちは一旦下がります。アブマド王よ、この事は全て本国に報告させて頂きます。それでは失礼」
「わ、分かったでし…」
ルシアとロゼを連れて、大広間を後にする。
その際、シンドバッド王の何か探るような視線を感じたのは気のせいではないだろう。
取りあえず私は本国、フリーアに連絡を入れなくては。