誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-04


少年―アリババ・サルージャは拳を強く握り締めながら、真っ直ぐと前を見据えていた。
民衆の支持を得たら、第三王子という身分を明かし、バルバッド王アブマドと話を付ける。
シンドバッドが提案したのは、このアリババの作戦を今こそ実行に移す事。
民衆の支持は既に得た。
アリババの王子という身分は"シンドリア王"が保証してくれる。
全ての条件は整い、遂にアリババが、第3王子として、そして国民の代表として、バルバッド王アブマドとの会談に臨む日がやって来た。

アブマドに謁見し、アリババが最初に口にしたのは懺悔の言葉。
宝物庫の事件は、自分のせいで起きた。
父である前バルバッド王が亡くなったのも、自分が原因も同然だと。

それを認めた上で、アリババはアブマドに言う。
何故、「霧の団」が宝物庫を襲ったのか、何故、今国民達が王宮に押し寄せているか考えて欲しいと。
今のアブマドの政治で、貧しい国民が苦しんでいるという事を分かって欲しいと。

「だから今日、ここに来た。この国の、国王たるあんたの力で、国民の生活を、これからは全力で守ると約束してくれ!そうすれば、俺は"霧の団"を解散する!」

しかし、その言葉にアブマドは耳を傾けることはなく。
国民達の悲痛な叫びは届かない。

「下賊の者が、王族に語り掛けるは無礼であるぞ。余は、第二十三代バルバッド王国国王アブマド・サルージャ。下賊の者と語らう口は持たぬ。スラムの拾い子を、弟などと思うたことはない。そちの首、シンドリア国王殿の庇護なくば、とうに飛んでいることを忘れるな」

「なっ…俺の話を聞いてくれ――」

「アブマド陛下!大変です!!」

続けようとした言葉が、突然駆け込んできた兵によって遮られる。
自分の言葉が全く届かない。
悔しさで歯噛みするアリババを横目に、兵がアブマドの耳元に何やら囁いた。

「何?フリーア…レン王女だと?お通ししろ」

「はっ!…あの、しかし…」

「構わん、おじさん達には下がってもらうでし」

アリババの姿などまるで眼中にないかのような振る舞い。
民衆の期待を背負ってここへ来たのだ。
このままで終わるなんて出来ない、無我夢中でアリババは叫んだ。

「っ俺の話は終わっていない!聞け!聞いてくれアブマド兄さん!」

「余は忙しいのだ。とっとと下がれ」

シンドバッドも何も喋らない。
もう駄目なのか、そう思った時だった。

「お取り込みの中、無礼をお許しください」

大広間に凛とした声が響いた。
振り返れば、銀色の髪をした美しい女性。
そしてその背後に控える、白金色の髪をした青年と、フードを深く被った人影。
その姿を認めた瞬間、アブマドの様子が急変し、ペコペコと媚びを売る様子に困惑する。

「これはこれは、レン王女!遠路遙々と…直ぐ人払いを――」

「その必要はありません。割り込んだのは私達です。彼らが下がる必要はありません。そうでしょう?」

彼女は何者なのだろうか。
目が合った一瞬、銀髪の彼女は、アリババに微笑んだ気がした。


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