誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-03


「……ねえロゼ」

「……大丈夫です。多分ロゼも、今レン様と同じこと思ってます」

呆然と立ち尽くす私たちの目の前には、地面にめり込むようにして呻く門番。
と、その横で何事もなかったかのように剣を鞘に戻すルシア。
少し記憶を遡ろう。
アブマドにこの国の現状を確かめようと王宮に向かった私たちは、王宮目前で門番による足留めを受けていた。

「お、お待ちください!王には今、謁見できません!」

「謁見できない?私たちは事前に連絡を寄越していたでしょう?通しなさい!」

「し、しかし、今シンドリアのシンドバッド王が…」

「シンドバッド王?…彼とは面識があります。私達が立ち会っても構わないでしょう」

「そ、それは…」

我ながら、無茶な要求だと思う。
でも、それほどこの国の現状が酷いのだ。
姉妹国として見過ごすわけにはいかない。
何としても通してもらわなくては…

「それとも何か?…私が、フリーア国が立ち会っては都合の悪い話なのでしょうか?」

「そ、そう言うわけでは――ぐっ!?」

「!?」

そんなときだった。
突然門番が呻き声を上げながら、地面に倒れ込む。
あまりの出来事に、呆然と立ち尽くす私達に、彼は言った。

「邪魔者はいなくなりました。さあ、参りましょう…レン様?ロゼ?」

「「………」」

「……ねえロゼ」

「……大丈夫です。多分ロゼも、今レン様と同じこと思ってます」

いくらなんでもやりすぎだ、思わず隣でフードの上から頭を抱えているロゼと共に溜息をつく。
でも、私ももしかしたら、早まって同じ事をしていたかもしれない。
第三王女が門兵ともめごとを起こしたなんて国に知れたら…
こう言っては何なのだけど、ルシアのお陰で少し落ち着いたような気がする。


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