誇り高き至高の月 | ナノ

バルバッド編-05


「どうぞ、お入りください」

そう言って恭しく頭を下げた兵士を一瞥して、扉へと近づく。
中からは怒鳴り声やら何やらが聞こえてきて、入ってもいいのかと疑いたくなるが、良いと言われたのだから構わないのだろう。
躊躇いもなく扉を開くと、必死な金髪の少年の声が鼓膜を震わせた。

「っ俺の話は終わっていない!聞け!聞いてくれアブマド兄さん!」

ルシアとロゼについてくるように合図をして、大広間に踏み込む。
当たり前と言えば当たり前なのだが、ばっちりとお取り込み中のようで・・・
何というか、入りにくい雰囲気だ。
少しタイミングを伺わせていただこう。
そんなことを頭で考えながら、広間にいる面子を確認する。
玉座にふんぞり返っているアブマド王と、その後ろに控える弟であり福王のサブマド。
そして、アブマドに必死に叫んでいる金髪の少年。
少年のその横にいるのは・・・間違いない、シンドリア国のシンドバッド王だ。
どうやらシンドバッド王たちも、私と同じことをアブマドに問い詰めに来たのだろう。
しかし、場の雰囲気から話が上手く解決できていないようだ。

「余は忙しいのだ。とっとと下がれ」

アブマドの発した一言により、広間がシンとした静寂に包まれる。
割って入るなら今だろう。

「お取り込みの中、無礼をお許しください」

静まり返った広間に私の声が響き、広間にいた全員が一斉に此方を振り返った。
そんな、全員でタイミングを合わせたかのように振り向かなくてもいいのに・・・
私たちの姿を見留めたであろうアブマドが、背を伸ばして目を輝かせるのを感じながら、広間の真ん中に進み出る。
何というか、シンドバッド王と金髪の少年からの視線が痛い。

「これはこれは、レン王女!遠路遙々と…直ぐ人払いをいたしましょ―」

「その必要はありません。割り込んだのは私達です。彼らが下がる必要はありません。そうでしょう?」

助かったと言わんばかりに人払いをしようとするアブマドの言葉を遮る。
きっと私がしようとしていた話とシンドバッド王たちの話はたいして変わらないようで。
折角なのだから一緒にアブマドを問い詰めていただこうではないか。


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