バルバッド編-02
ルシアとロゼを従えて、王宮を一心不乱に目指す。
路地の側を抜ける際に、嫌でも目に入るスラム街。
途中今にも倒れてしまいそうな人々を見かければ見かけるほど、私の心は急き立てられる。
そしてようやくたどり着いた王宮を目前に、私はその光景に息を飲んだ。
「これは一体…?」
「レン様、いかがいたしますか?」
王宮の前に群がる、沢山の民衆。
ゾクリ、と身体に震えが走る。
何か、とても…
何かとんでもないことが起こりそうな、そんな予感。
「っ行きましょう!」
人ごみの間を縫うように、王宮を目指す。
早く、早くしなくては…
「お前たちは何者だ!ここはバルバッド国王の住まわれる宮殿、用のないものは通すことはできぬ!」
門の前で、門前の警備であろう二人の兵士に遮られる。
内政はめちゃくちゃでも、城の警備だけはまともにしているのね。
そう心の中で皮肉を言いながら、私は堂々と相手を見据えた。
「私はフリーア王国第三王女、レン・スラーメリー=アルハリーム!アブマド王に謁見を賜りたい!」
「ふ、フリーア国の!こ、これは失礼しました!しかし王は今、シンドリアの…」
私たちが来ることを事前に知らされていなかったのだろうか、門番の顔に驚きと焦りが浮かぶ。
嗚呼、こんなことで時間を潰している暇はないのに…
私は逸る心を抑えながら、憎々しげにそびえ立つ王宮を睨みつけた。