最後の決戦

※世宇子戦

「閉鎖…?」
「どういう事だ?」

スタジアムに来てみれば門は閉まっており人気も感じられない。

すると夏美の携帯に電話がかかりその内容は
「大会本部から急遽、決勝戦の場所がかわったて…」
急遽試合会場が変更となり皆んな動揺する中頭上に巨大な浮遊物を確認する。

「まさか…決勝戦のスタジアムというのは」
「あそこ…?」

まって、これどうやって中入るん?とか考えていると
長い長い階段が現れスタジアムへと恐る恐る移動する。
「これ、階段で体力奪うとかせこい戦法じゃないよね」
「そんな馬鹿げた事を影山がするとは思えないがな」
あまりの階段の長さに鬼道に愚痴をこぼすがいたって彼は真面目に返して来た。

ようやく登り切ってスタジアムの中へと入ると何かの視線を感じた。
円堂も感じたのか後ろを振り向けばそこには彫刻の上に立つ影山の姿があった。

「影山っ!」
その円堂の言葉に雷門メンバーが後ろへと視線を集めた。
皆んなが影山を見つめる中、豪炎寺は何処と無く手が震えていた。

「円堂、話がある」

響木監督が何かを覚悟したように言葉を発した。
それは円堂のおじいさんの死は影山が関わっているかもしれないとのことだった。
誰もが驚きと同様が隠せなくなる。

響木監督はもし影山への恨みでサッカーをするようであれば監督は辞めると告げた。
円堂の大好きなサッカーをそのままにしておく為と、

円堂を見つめていると彼は荒い呼吸を何度も繰り返していた、
そんな円堂をなんとかしたくて無意識に手を握った。
円堂は弾かれたように私をその瞳に写した。
同じタイミングで豪炎寺も肩を掴み円堂を見つめた。
「円堂、1回深呼吸」
そう促せば言葉に従い息を吸い込み、深く吐いた。
彼が落ち着いた所で皆んなが其々円堂の名前を呼んだ。
円堂はまたひと呼吸おき、握られてた手をキュッと握り返してくれた。
「…監督、みんな、こんなに俺を思ってくれる仲間、皆んなに出会えたのはサッカーのお陰なんだ」

影山への憎しみはあれど、そんな気持ちでプレーしたくない。彼がひとつひとつ言葉を発する度に手のひらはポカポカと暖かくなる。

「サッカーは楽しくて、面白くて、ワクワクする、ひとつのボールに皆んなの熱い気持ちをぶつける最高のスポーツなんだっ!」

だからこの試合もいつも通り、雷門のサッカーをすると宣言した。
皆んなが安堵に包まれ響木監督も決意が固まったようだ。
「さぁ!試合の準備だ!」
その言葉に皆んな動き出す。
あたしも円堂の手を離し更衣室に向かおうとするとそのまままた掴まれた。
「?どうしたの?」
「名前、ありがとな」
ギュゥッと握られ何時もの太陽のような笑顔がそこにはあった。
「円堂、全力を出してこの試合、勝とう!」
「おう!」

着替えてフィールドに出れば観客席は先ほどと打って変わり満席だった。

「円堂!円陣組もう!」
「おう!」
皆んなに声を掛け其々肩を組んだ
「いいか!皆んな!全力でぶつかれば、何とかなる!」
側からみれば曖昧なその言葉も、円堂が言うことにより皆んなに何倍もの力を与える。
「勝とうぜ!!」

「「「「「おう!」」」」


そんな中世宇子のベンチには人数分のグラスが丁寧に運ばれていた
それを手に取り優雅に飲み干す。

「おうおう、貴族気取りか」
「あいつらの場合だと神様気取りだろうな」
ムカついてポロリと出た言葉を風丸が拾ってくれた。
「けっ、余裕見せやがって」

アップも充分にし、試合が始まる。
あたしはベンチスタートとなる。

「皆んな、わかってるとは思うけど気をつけて」

分かりきった事を言うのも何だと思ったがフィールドに向かっていく皆んなに声を掛けた。
「あぁ、何があるかわからないお前もすぐ出れるようにしておけよ」
「うんっ」
豪炎寺のその言葉に何もない事を祈るばかりである。




「何が起こってるの?」

試合は開始された。
ボールはアフロディに渡ったが彼はゆっくりと歩いてボールを蹴る。
ドリブルと呼んでいいのかも危ういほどゆっくりと優雅に。
だが染岡、豪炎寺が向かっていくも気づけば2人をすり抜け、鬼道、一ノ瀬とも続くが彼を止められない。
彼が過ぎ去った後に突風が出遅れたよう現れ次々に飛ばされていく。


ついにディフェンスの壁山、土門も抜かし円堂の目の前へと到着した。


「キミは、天使の羽ばたきを聞いたことはあるかい?」

フィールドから離れているベンチにもその言葉はやけに大きく耳に届いた。

"アレ"が、来るっ!!

アフロディが軽やかにジャンプすると彼の背に翼が現れまるで羽ばたいているかのようだ。

《ゴッドノウズ》

そしてジャンプのタイミングで上に蹴り出されていたボールはまばゆい光をおび彼の足によって発射される。その光景に震えが止まらなくなる。

《ゴッドハンド!!》
「ぐあっ!!」
円堂がゴッドハンドを繰り出すも押し負け円堂ごとゴールへと叩き込まれる

皆んな動揺が隠せなかった。

『何と言うことでしょう世宇子中キャプテンアフロディ雷門に全くボールを触れさずにゴール!これぞまさに神の領域!』


雷門からのキックオフになり攻め込むが世宇子は全く動こうとしない。嫌な予感と胸騒ぎが止まらない。

そのままゴールまで豪炎寺と染岡が向かい、ドラゴントルネードを放つが

《ツナミウォール》

キーパーのポセイドンの周りに波が押し寄せボールを攫っていく、これまで成長してきて威力は充分に上がっているはずの染岡と豪炎寺の連携をあっさり止められてしまった。
そのままポセイドンは豪炎寺にボールを放り挑発をかます

「舐めやがって!!」
ベンチが歯がゆく硬く握り締めしめていると
「名前ちゃん、力抜いて」
「秋…ちゃん?」
「手、傷ついちゃうよ」
「…ありがとう」
秋の言葉に少し冷静さを取り戻し試合に集中する。

その後、皇帝ペンギン2号、ザ・フェニックス次々にシュート技をきめるがポセイドンによって意図も簡単に止められてしまう。
流石に其々の技を止められ段々とチームに不安な空気が淀み始める。

世宇子の必殺技により次々に雷門は選手を交代してゆく
松林、栗松、マックスがマネージャー達によって手当を受ける中いてもたってもいられず監督の前に進む
「監督っ!あたしも交代を!!」
「お前は最後だ」
「えええ!?なんで!?」
響木は昨日自分を訪ねてきた青年を思い出していた。
『親爺さん、名前には土壇場をひっくり返す"とっておき"を教えた。だから、あいつが交代を進言してきても最後まで待たせてやってくれ、冷静にフィールドと向き合えと言ってやってくれ』
『お前さんは、誰なんだ』
『…通りすがりのしがないお兄さんさ』

「お前は今慌てすぎている、冷静にフィールドを見ろ、出ないと出てもすぐ怪我をするだけだ」
「っ…はいっ影野、宍戸、気をつけて」

「はい!」
元気に返事をする宍戸、
「うん、名前も、敵の動きをしっかり見てて」
細かな所に気付きやすい影野からのアドバイスに笑顔で見送る
「わかった」

染岡が世宇子陣地に上がりこむが、ディオの必殺技、メガクェイクにより足場が割れ地面に叩きつけられる。

「交代は…名前か?」
マックスの声にいよいよかと立ち上がろうとした時
「ぼ、僕が行きますっ!」
1人が立ち上がり名乗りをあげた。
「目金…」
それは人一倍気弱な目金だった。
「僕だって…雷門の一員だっ!」

FWとして入ったはいいが体は恐怖でガチガチになっていた。
ボールを受け取り進もうとするがディオがすぐ後ろに迫っていた

《メガクェイク》

「目金!!!」

目金はディオの技により背中から落ち担架でベンチまで運ばれた。

「監督、行きます。今行かなきゃ」

「…わかった」

『ここで目金の代わりに苗字が入ります!これで雷門は交代枠を全て使い切った!』
ゆっくりと深呼吸をする。見つめるは相手ゴール、
「名前、行けるか」
「モチのろんよ」
隣に来た豪炎寺に笑って返す。こうでもしなきゃ足がガクブルで言うことを聞かなくなる。

「名前!」
「よっしゃ来た!」
鬼道からのパスを受け取りドリブルをしていく、正面にはFWのデメテルが待ち構えていた。
「神に刃向かう愚かな凡人がっ!さっさっと倒れろ!」

「マジかっ!」
突風が襲いかかりそのまま風によって体が持ち上がる

「ひっ」

ボールはあっという間にとられそして身体は地面へと叩きつけられる。

「ぐえっ、」

「名前!ぐっあ!!!」

すぐ立ち上がりデメテルをら追いかける。

出たところで、何もできない、できない、できないっっ!!!
ギリっと唇を噛み締めてフィールドに倒れていく仲間を見る。

デメテルからボールはアフロディにわたり息も絶え絶えにアフロディに向かう。
「ボール寄越せぇ!!」
「随分と張り切っているね、友の仇は取れそうかい?」
「アフロディっ!!」
キっと睨みつければ彼はクスクスと笑う。
「私は紳士だからね、最初だけ必殺技は使わないであげよう。そら、ボールとってご覧よ」
「こんのっ!!」
「名前!無茶をするな!!」
鬼道の言葉も耳には入ってきたが脳は理解を受け付けなかった。

「くっそ!くそ!!」
ボールを取ろうと足を出すも出す前に避けられ遊ばれている感覚になる。

「残念、キミぐらいなら必殺技を使う必要もないのさ」
「あ"っ」
遂には抜かされクルリと周ろうとするも脚がもつれ倒れこむ。
「名前!!」
一ノ瀬の心配そうな声が聞こえた。こんな時まで人に気を遣える。なんて紳士なんだ。
異様な疲れが襲いかかり立ち上がるのに時間がかかった。
顔を上げれば
遂にはボールを顔面に受けた円堂も倒れてしまう。そんな円堂を見下ろしアフロディは言葉を紡いだ。




「まだ続けるかい?続けるよね?じゃあ質問を変えよう。チームメイトが傷つく姿をまだ見たいかい?」



prev next

bkm

 [TOP ]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -