神の挑戦状

あれから放課後部活後河川敷に行ってはお兄さんとの特訓に励んでいた。
「そういえば、お兄さんの名前聞いてない」
「名を名乗るって程でも…巷じゃ抹茶だの宝死茶(ほうじちゃ)なんて呼ばれてたっけなぁ…」
「なにそのお茶縛り伊◯園の回し者かっ!二つ目なんて物騒な字入ってんだけど!!」
「ははは!ま、お兄さんでいいだろ、妹出来たみたいでいいな!」
名乗る気が一切ないお兄さんにため息をつきそのままでいいかとなった。



部活時間軽くみんなでミニゲームをすると言っていたのに中々来ない円堂にみんなどうしたとなっていたら少し顔が濡れている円堂が走ってきた。
「ごめんごめん!遅れた!」
「マジンザハンドの自主練?」
「うん、胸鍛えたり、肺を鍛えたり…影野からは呼吸っていわれた!まだまだやれる事はある!」
「そっか、あ、ちょっとドリンク飲んでくる!」
「おう!」

乾いた喉に秋たちが作ってくれたドリンクを流し込む。適度な薄さと冷たさが喉を潤してくれる。
ふぅ、と一息つくと記録をとってくれていた春菜たちの声が耳に届いた

「じゃあみんなに気持ちよく練習してもらうために…やりますか!」
「やりますか!!」
「…?どう言う事?」
秋と春菜の話がわからない夏美は頭に疑問符を浮かべていた。そろりと春菜の後ろにまわりギュッと抱きしめる
「なになに〜?マネージャーで企みかなぁ〜?」
「わ!名前先輩!」
「ふふ、名前ちゃん、今からコレやるの」
秋がギュッと何かを握るジェスチャーをしてピンときた。
「成る程ぉ〜、よし、あたしは練習ひと段落ついたから手伝う!」
「え!良いよ良いよ!休んで?」
「やーりーまーすー!さ、夏美も行こう!」
「え、ちょっと!」
先に歩いていく秋たちに遅れをとっていた夏美の手をとり部室へと進んでいく
「お米って炊いてある?」
「うん、元々作るつもりだったからあらかじめ炊いてあるよ調理実習室に置いてある」
「よし来た!運ぶのは任せて〜!秋ちゃんと春菜ちゃんは夏美のお支度よろしく〜!」
「ごめんね?重いから気をつけてね?」
「はーい!」


調理実習室には炊きあがって待ってましたと言わんばかりの炊飯器があった。ちょうどよかったからでもしっかり洗い持ち上げる数分もすれば難なく炊飯器を部室へと運び入れることができ、準備も万端になっていたので自分も余っていたエプロンをつける
まだしっくり来ていない夏美にコレからやることを伝える

「みんなお腹空いてるから」

「おにぎりの差し入れです!」

「張り切っていこー!」

そんなあたしたちの姿になぜか苦笑いを向けた。その理由がすぐにわかった。



「おっとー!目の前が真っ白だ」

「うぅ、ごめんなさい…」

いざおにぎりをそれぞれ握り始めつくっていたら夏美がお米のあまりの熱さに驚き手に持っていたお米を部室中に散らばしてしまった。因みに真横にいたあたしはほぼそのお米を顔面で受け止めた。

失敗してしまった事に顔を赤くしている夏美に秋ちゃんが名案を思い浮かべた

お茶碗を使ってのおにぎり作りだ。

バーテンダー顔負けの勢いでお茶碗を振る姿に少しヒヤヒヤしたが覚束ない手である程度形のできたお米の形を整える。
「できた…!ほら!」
あたし達に出来上がったおにぎり第1号を見て見てと見せてくれる。形は少々丸みを帯びていたが初めて握ったおにぎりにテンションが上がっている夏美をみたらこちらまでなんだかあったかくなった。

そのあとみんなでせっせとおにぎりを作っていく。手際よく作っていく秋、とっても大きいく少し歪なおにぎりをつくる夏美、キッチリと三角に握る春菜そして

「ふんっぬ」

「す、凄い、巨大なおにぎりが名前先輩の手によって圧縮されてる!!」

あらかじめ大きく作ってそれをギュゥッと握って秋達のような普通のおにぎりの大きさに仕上げるあたし。


そして各自みっちりとおにぎりでうまったお盆や、水と紙コップを持ってグラウンドへと行きみんなに声をかける

「みんなー!おにぎりができましたー!」
「有り難くもらえー!」

その声に練習していたメンツは雄叫びをあげ駆け寄ってきた。
まず始めに走ってきた円堂はグローブを取りおにぎりに手を伸ばすがその手を夏美が叩いた

「いって!何すんだよぉ〜」

マナーに厳しい夏美は
可愛い我が子(おにぎり)を汚れた手で取ろうとした事に腹を立てたのか
「手を洗ってきなさい!」と水場を指差して促す

その声にみんな渋々と返事をし水場に向かうが向こうからこちらにやってくる影を捉えた

「ふっ、」

しっかりとハンカチで手を拭きながらこちらに向かって来ている鬼道であった。流石坊ちゃん。マナーがしっかりしてる。
みんなも呆然と眺めてしまっていた。

みんな洗って帰ってきてまだかまだかとこちらに視線をよこしてくる。
そんな姿に秋は苦笑いし

「はい、どーぞ!」

と声をかけたら凄まじい男どもの波が押し寄せてきた。

「春菜が作ったのはどれだ」
「このあたりかなー」
指差すと迷わずそれをとった。流石鬼道。ブレない。
春菜も嬉しそうである。

「美味いっす!美味いっす!!このおにぎりなんか沢山食べた気になるっす!」
バクバクと次々に口に入れていく壁山や
「う?んん??確かにこのおにぎりなんだか1個で3個食った気になるなんでだ?」
「不思議だね?」
「圧縮されてますからな」
「圧縮!?」
「え?どういう事??」
不思議そうにしている土門と一ノ瀬に事実を伝えたのに逆に混乱させてしまったみたいだ。今度作ってるとこ見せてあげよう。

そのあと円堂がうっかりぽっくりいくとこだった。何があったよ。

次の日登校している途中に円堂と出会いマジンザハンドの練習方法について話された。
「ここを鍛えるにはどうしたらいいと思う?昨日はとりあえず胸を鍛えたり、肺を鍛えたりしたんだけどさ」
「心臓…?心?精神的なものかな?座禅とか?なんか清い心になればなんか出るんじゃね?」
「そうか!座禅か!!ありがとうな!」
「お、おん」
マジンザハンドを取得する為にひたすらがむしゃらに頑張る円堂の姿に自分も負けてられないなと心の中で意気込む
「名前最近部活終わった後河川敷の方に向かってるけど1人で特訓か?」
「え?うーん?うん?まあそんなとこ?必殺技でも編みだそうかなって。円堂はどう?マジンザハンドとやらは順調?」
「それがさ!俺昨日母ちゃんに爺ちゃんの話初めて聞いてさ!ヘソと尻に力を入れれば取れない球はないって教えてくれたんだ!」
「反対してたのによく聞けたね」
「うん!俺、もう嬉しくってさ!お互い頑張ろうぜ!」
「うん!」
突き出された拳にコツンとつき合わせた。




「よし、来い!!」

円堂が立つゴールの前には豪炎寺、染岡、鬼道、一ノ瀬が控えていた。
円堂が構えを取ると一斉に走り出した。

《ドラゴン…》
《トルネードッ!!》

《《ツインブースト!!》》

2組から放たれたボールは真っ直ぐゴールへと向かっていくがその間に人影が入り込んだ

みんなが驚愕したのは入り込んできたのもそうだが、いとも簡単に必殺技を止めてみせたのだ。
彼は長いブロンドヘアをなびかせ澄ました顔でその場に立っていた。
「すっげぇ!ドラゴントルネードとツインブーストを止めるなんて!お前、凄いキーパーだな!」
円堂が興奮して声をかけるが彼はキーパーではないと否定の言葉を出しそして、
「我がチームのキーパーはコレを指一本で止めて見せるだろうな」

鬼道が近づいていき
「そのチームってのは世宇子中のことだろう、アフロディ」

鬼道の言葉にどよめき立つ
皆んなからの視線も気にもせずアフロディは口を開いた。
「円堂守くんだね?改めて自己紹介せてもらおう世宇子中のアフロディだ。君のことは影山総帥から聞いているよ」
その言葉に鬼道に少し動揺が見られた。

「やはり…世宇子中には影山がいるのか」
「て、テメェ宣戦布告に来やがったな!」
食ってかかる染岡をチラリと見やりアフロディは冷めたような口ぶりになる
「宣戦布告?ふふ、」
「何がおかしい!」
「宣戦布告というのは、戦う為にするもの…私は君達と戦うつもりはない」

君達も戦わないほうがいいと負けるからと高みからの物言いでカチンとくる
「神と人間が戦っても勝敗は目に見えているだろう?」

「神様とでも言うつもり?」
ギュッと拳を握りしめて問う
「さぁ、どうだろうね」
「こんのっ!」
「落ち着け!」
「半田離して!あいつの頭引っ叩く!」
「暴力で解決しようだなんて些か物騒だね」

「試合は、やってみなくちゃわからないだろ!」
「ふふ、そうかな?りんごは木から落ちるだろう?世の中には逆らえない事実があるのさそれに、そんなことそこにいる鬼道くんや、試合に見に来ていた君もわかっているんじゃないかい?」
「お 前 ッッッ!!!!」

ニッコリと嫌味ったらしく告げた彼の言葉にあの帝国との試合で傷つき倒れていく佐久間たちやそして何より最後まで止める意思のこもった瞳をしていた源田が倒れたシーンが脳裏にチラついた。

「待て!待てって!!」
「半田先輩何してるでヤンスか!」
「無理無理!止められない!」
半田の手を振りほどきアフロディへと近づく
「そんな瞳をしてどうしたんだい?いまから友の仇でも打つかのようじゃないか」
「ようかじゃない、打つんだよ!!」
「名前!」
「鬼道、」
「やめろ、その拳どうする気だ。源田や、佐久間の仇は試合でしか打てん」
「っ、」
「神に向って来るだなんてなんて愚かな…こんな練習をしたって無駄だよ、やめたまえ」


「うるさい…」
それまで黙っていた円堂がアフロディを見つめた。その瞳は見たこともない鋭いものだったので一瞬自分も落ち着きを取り戻せた。

「練習が無駄なんて誰にも言わせない!」
誰よりも練習し、タイヤに吹っ飛ばされて、そして成長してきた円堂、その彼の基盤ともなる練習を真っ向から否定されて流石の彼も頭にきたらしい。

「練習はおにぎりだ!」

「俺たちの血となり、肉となるんだっ!!」

円堂らしい言い回しで練習の大切さをアフロディに伝えるが

「あははは!上手いこと言うね」

「笑うところじゃないぞ」
円堂の怒気のこもった声に恐怖を少し感じた。

「仕方ないなぁ、じゃあそれが無駄なことだと証明してあげるよ!」
言葉を言い切ると同時にアフロディは手に持っているボールを高く蹴り上げた
目の前にいたはずの彼は消えいつのまにか天高く飛んで行ったボールの真正面にいた。
「い、いつの間に!?」

トンっと軽く蹴った彼のボールが軽く蹴ったハズのボールがゴールに近づくにつれ威力を増していく
円堂は止めるべく構えを取るがそんな姿が源田と重なった
「円堂!避けろ!!」
たまらず叫んだが円堂は正面からそれを受け止め少し耐えきったかのように見えたが吹き飛ばされてしまう。

「「「円堂!!」」」
豪炎寺、鬼道と円堂の元に駆け寄りあたしも例外ではなく側に駆け寄る

「大丈夫か!!」
鬼道が抱き起すがその瞳は閉じたままで恐怖が胸中を渦巻く
「ねぇ、円堂!目開けて!!」
「…ぐっ、」
意識がある事にみんな安心する。
「しっかりしなさい!」
「円堂くん!」
「円堂!!」
みんなが呼びかけていると薄っすらかれの瞳が開いた。が彼の瞳はチラリと動きアフロディを捉える


「どけよっ!!」
駆け寄ってきていたあたし達を乱暴な言葉と共に手で払う。
円堂の荒々しい態度にみんな動揺する
グラリと立ち上がり倒れそうになるも鬼道が支える。そんな鬼道の手も邪魔だと言うかのように振り払い涼しい顔をしたアフロディから目を離さない
「来いよっ!!もう1発!!」

「今の本気じゃないだろう…本気で、どんと来いよ!!」
ガクガクと膝を震わせ、遂には膝を地面についてしまう
なおも立ち上がろうとする円堂にアフロディは高らかに笑ってみせた
「面白い、神のボールをカットしたのは君が初めてだ決勝が少し楽しくなったよ」

そう言い切ると光とともに何処かへと姿をくらましてしまった。

「なんてやつだ…」
「世宇子中はアイツみたいな奴ばかりなんだ」
「決勝戦、とんでもない事になりそうだな」
一ノ瀬、鬼道、豪炎寺が少し話しているとそれまで膝をついていた円堂が尻もちをついた。
「…はぁ、」
「円堂、手、手当てしよ」
自分もしゃがみ円堂と目線を合わせる秋ちゃんたちが救急箱を持って来るのを遠目で確認しそう伝えるとくしゃりと彼がわらった。よかった、何時もの彼が戻ってきた。
安堵していると両サイドに豪炎寺と鬼道がきた
「円堂、」
「手はいるか?」
手を差し伸べる2人に
「いるいる、サンキュー」
今度は振り払わずしっかりと2人の手を握りたちあがる。
「へへ、今のボールで新しい技が見えた気がするぜ!」

「やれるよ!俺たち!」

「いや」

前向きに戻った円堂の言葉を聞き覚えの声が遮る
振り向けば響木監督が前掛け姿のままそこに居た

「今のお前たちには絶対不可能だ」

重い言葉が突き出された。



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