お兄さん

「んじゃ、源田、佐久間、そろそろ帰るね!」
「あぁ、いつもすまない」
「あたしが来たいから来てるだけだから気にしないでまた来るね」
「そろそろ個別の部屋に変えた方がいいと思う」
「なんで?」
「本気か、本気で言ってるのかイチャコラしやがってリア充」
「イチャ」
「コラ…?」

帝国学園は世宇子との戦いが終わった後学校近くの病院へと搬送された。
特にキーパーで強烈なシュートを受け止めた源田の容態は酷く2日目を覚まさなかった。
源田が目を覚ましたという知らせを受けた名前が看護師に怒られながらも病室に駆け込んできて源田に泣きながら飛びついたのは記憶に新しい。

しかもだ、雷門から帝国までさほど距離がないと言えども練習の始まる時間を個人でズラし少しの時間でも見舞いに来るのはそれほど想っていなければ取れない行動だ。

「お前ら早く気づいてくれ本当、苗字気をつけて帰れよ」
「え?うん?うん??」
ガラガラと病室のドアを開けて疑問符を浮かべながら彼女は去っていった。
佐久間は源田に向き

「告白、しないのか?」
「告白…?」
「好きなんだろ、苗字の事」
「あぁ、好きだが何故告白するんだ?」
あぁ、こいつも大層鈍いやつだった
きっと源田の好きのそれは仲間としてのものだろう、だが側からみてどう見たって態度は異性への好意そのもの。
自覚したら大変なやつだなぁと1人心の中で言ちた。



名前は病院から走って河川敷までやってきていた。
一旦休憩を取ろうと止まると雷門がよく使うサッカーコートで1人の男が立っていた。健康的に焼けた肌に短い黒髪、お兄さんは足元のサッカーボールを器用にリフティングして華麗にシュートを決めた

「すげぇ…」
「そんなジロジロ見られると照れちまうよ嬢ちゃん」
くるりとこちらを向き目を見て言われてしまって慌てる
「あ!ご、ごめんなさい!」
「謝るほどじゃないだろ」
ニカッと笑ったお兄さんは何処と無く円堂のような暖かさを感じた。

「嬢ちゃんサッカー部か?」
「え、なんで?」
「そのジャージ、雷門だろ?雷門って言ったらサッカーかなって」
今ちょっとした有名だろ?と続けるお兄さんに弱小チームの雷門がFFの地区予選を突破すれば確かに有名にもなるかとヒシヒシと感じた。

「それに走り方ピッチ走法だったろ」
「すっげ、そんなんでわかるもんなんですか?」
てか、爆走してるの見られてたよ恥ずかし

「んで?そんなに必死な顔してどうしたんだ?」

初めて会ったはずなのにそんな事を感じさせないお兄さんの様子に胸にある不安をポツリと零した。

「あたし、お兄さんみたいにすごいサッカー上手いってわけじゃないしそれに、力になれるか不安で…」
世宇子のあの強さに対抗できるのか円堂も不安で眠寝てないと零していてその気持ちもわかるしそう思うと昼しか眠れていない。
おかげで先生に怒られてばかりだ。

「そうか…なら寝て力をつける。それに限るな!」
「え?」
「寝不足だと力を充分に発揮できない、だからしっかり寝るんだ、夜寝れなきゃ夜風に当たって星を見ろ、そしてホットミルクも飲むなんてのはどうだ?」

なんだか自分がごちゃごちゃ考えてたのがバカらしくなるほど真っ直ぐな回答にポカンとしてしまう。

「…後はそうさな」
お兄さんは数秒黙り視線を外したのち口を開いた。
「…"とっておき"を身につけておくぐらいだな」
「とっておき…?」


ちょっと見ててくれと言い残しフィールドに戻る

お兄さんは足元のボールを確認作業の様にトントンと足で扱い
ゴールに目をやった。


お兄さんから放たれたボールに目を離せなかった。
あまりの威力に寒気を感じペタンと尻餅をついていた。
「意外に出来るもんだな」

「今のは…」
「必殺技ってやつだな、まあ本来のヤツより威力は低めに打ったやつだが」
「あ、あれで手加減!?」
「本気で打っちまったら肢体が無くなっちまう」
「怖っ!?」
「もしかしたらサッカーできなくなる。それほどとっておきの諸刃の剣だ。どうだ?」
教えることはできるが教わるのを乞うのはお前さん自身だ。
そう言うお兄さんの目は頼むから教わると言わないでくれとでも言っているかの様だった。
だが、帝国を源田達をあんな目に合わせた世宇子になにより、勝つと信じている雷門のみんなやマジンザハンドの為に無茶している円堂の力になり勝ちたいという気持ちが大きく胸の中にあった。

「お願いします。」

「…あぁ、わかった」
切なくお兄さんは笑った。



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bkm

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