キャッチボール
「なぁ、お前野球やってたって本当?」
今日は訓練などもない休日。何して過ごそうかなと遅めの朝食を食べてるわたしのところにグローブを小脇に持ったアレックスがジッと見つめてきたとおもったら向かいに座ってその一言を発した。
不意にきいてきた彼に一瞬遅れをとった。
「ん?うん、子供の時だけど少年野球チームはいってた」
「へー」
この前燈と話してたのを聞いたのだろうか?彼自身夢はメジャーリーガーと言っていたのでなんとなく話題に出したのだろう。
10年くらい前の記憶を思い出して思わず笑ってしまう。
「キャプテンもやったよ」
「…マジかよ」
心底驚いたという顔の彼に失礼だなーと言い軽くおでこにチョップした。
「まぁ、田舎の弱小チームだったからね気が強いってだけで推薦されて」
「想像つかねー」
アレックスは普段はおっとりとしてたりするからどう考えてもこの性格のこの外見のこの人が少年野球のキャプテンなぞとは程遠いと思っていた。
それにアレックスからみればとても小柄に見える丼が男と混ざって檄を飛ばしたりなどと想像が全くつかない。
「こら、身長は関係ないよ」
「あ、バレた?」
そんな彼に盛大にため息をついて牛乳を飲み干す。その間も動きそうにない彼に疑問を抱いた。
「ところでアレックスどっか行くんじゃなかったの?」
「んー、マルコスとキャッチボール」
「で?その相方のマルコスは?」
「便所」
ということは自分はマルコスが来るまでの間暇つぶし相手なのだろう。
「あたしもう食べ終わったから部屋戻るよ?」
ガタリとトレーを持って去ろうとすると服の裾を掴まれた。
「え、キャッチボールしようぜー」
「あたしグローブ持ってないもん」
「俺の貸すから」
「え、ちょっ!」
トレーを奪われしまいには腕を引かれ拒否権は一切なかった。でも特にこれと言って今日やりたいことがあるわけではなかったので大人しくついていくことにし、彼は食堂近くのドアから外に出て中庭へと足を運んだ。

「お、本当にちゃんと投げれるやつのフォーム」
「疑ってたわけー?」
「ちょっとなー」
アレックスが小脇に抱えてたグローブを借りて素手の彼とキャッチボールをする事になった。
「硬式は何回かしか触った事ないから難しいなぁー」
軟式ボールと違って重いし硬いしで離す位置を間違えると暴投しそうになる。
「本気で投げんなよ痛えから」
「素手相手にそんなことしませーん」
緩く軽くボールを彼に向けて放り投げる
アレックスは軽々とキャッチし、真っ直ぐ投げ返してくる。
「ちょっと、速いんだけど」
「グローブつけてんだし大丈夫だろ」
「こっちは10年ブランクあんの!」
カラカラと笑いながらも速球を緩めてくれる
「ねー、あたしとキャッチボール楽しい?」
「んー、コントロールの練習に丁度いい」
「チビで悪うございましたね」
またカラカラと笑う彼にわざとちょっと足元に球を投げたが軽々に取ってしまわれた。
というかマルコス遅いねぇという呟きに「おー」と空返事の後「俺はお前とキャッチボールしてぇ」と返してくるもんだから変に胸うった。



「なぁ、燈ー」
「ん?マルコス、アレックスとキャッチボールじゃなかったのかよ」
「アレックス、丼とスキャンダルだー」
「マジかよ!行こうぜ!」


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bkm
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