8
「やっと見つけたぞクソ仮面」

8話

彼女のスタンド、ジューンブライドがとらえたのは
なし子をこちらに引っ張て来た張本人、堕落王だった

見間違えるはずがないあのハイジャックされたテレビに映っていた本人
なし子は堕落王を見るなり顔が変わり彼をつけた
やっと人気がなくなり追い付いたのは地下の駐車場だった

「おっやあ?キミ、どこかで…」
「ふっざけんな!!!オメーがこっちにつれ来たんだろう!!」
「あぁ〜!あの時の人間か!いやあ楽しんでるかい?」

無言で堕落王に歩み寄り腕を伸ばし胸くらを掴む

「やあだなぁなんだい?キミ」
「あっちではまだやることがあるんだ!帰してくれ!!!」
「帰してくれって…君は嘆いていたじゃないかあの世界に」
「それはっ!!!そうだが、諦めてたわけじゃない!」
「じゃああのままで君はどうした?何をした?何も出来なかったじゃないか」
「うるさい!!!」

そのまままくし立てようとしたが堕落王から出てきた言葉にそれはできなくなった




「キミ、何故帰れないんだと思う?」


「あ?」

いきなりの質問にわけがわからなかった


「それは、帰る術をしらないからだろ」

「そりゃあ、そうだね、そうかもしれない」


「でもねえ」

「キミが帰ることを拒んでるからだと僕は推測するよ」

ガツンと鈍器で殴られるような感覚がした
少し呼吸も乱れる

「は?それって、どうゆう」

「この世界に来て本当は安心していたんじゃないのかい?」

「違う」

「一部見させてもらったけどライブラの奴らと一緒に居るそうじゃないか
 居心地がいいんじゃないかい?」

「…違う」

「なら何故わからない、」

「は?」

「開いていることに」

スイッと堕落王は天井を指さした

「不安定なあの世界が一回開いて終わりなわけないだろう馬鹿だなあ」

なし子の目がゆらゆらと泳ぎだす。

「世界は君を呼んでいる。気が付かないのか?」

何を言ってるんだコイツ

「まあでも、世界が呼んでいることに気付かないのは」

やめろ

「キミが」

それ以上言うな


「帰ることを恐れているからだろ?」


頭の中で何かが弾け言葉にならない叫びが口から吐き出された

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!」

「あーもう、うるさいなあ僕は言ったはずだよ?『気楽になれ』って」

「嘘だ、嘘だっ!!」

「君自身が遮断しているんだろう、気づかないはずだよ」

「そんなことない!!!」

「君のわけのわからない透けてるそいつが遮断してるんだろう」

「ジューン…?」

花嫁を見上げるとカンゾウの花が咲き乱れていた

「それは確かカンゾウという花だね、確か花言葉は…」



「悲しみをわすれる」



胸くらを掴んでいた腕の力は無くなり
ただ茫然とするしかなかった。

「あと言っておこう、彼らは知らず知らずのうちに増えているよ」



「夜道には気をつけろよ人間」

そういって堕落王は愉快に足取り軽く姿を消した。

もうそこにはなし子しか立っていなかった。



何分そこにいただろうか
頭の整理をしようとするが考えることすらできず
ただ地面を見つめることしかできなかった
出ようとした車に
何回かクラクションを鳴らされたが動く気力も残っておらず
いっそ轢いてくれとそう思った瞬間腕を強く引かれ
香水の匂いが鼻孔を満たした

「なし子!!!探したぞ!!!」

見上げれば息を切らせたスティーブンがなし子を厳しい顔で
見下ろしていた

クラクションを鳴らしていた運転手は暴言を吐き捨て通り去っていった

スティーブンは素早く携帯を取り出し誰かにかけはじめた
「クラウス、見つけた。あぁ、別状はなさそうだ。うん、今から行くよ」

「どうしていきなり居なくなったりしたんだ。」

「・・・・」

「キミなあ!!!…っ!?」

何も答えようとしないなし子に声を荒げたが
なし子の目からこぼれる滴に息をつめた

「あたし、知らないうちにあたしが捨てようとしてたんだ」

ぐしゃぐしゃと前髪を掻き回し視界を覆う

「どうした?なにがあった?」

スティーブンはなし子の異常な様子に背をかがめ目線を合わそうとする

「あっちは呼んでたのにあたしはっ!!」

「なし子!!!」

「っ!!」

スティーブンはなし子の両肩を揺らし意識を戻させる

「上にクラウス達が待ってる、話は帰ってからにしよう、な?」

「うん…」


しっかりと肩を抱きなし子の歩調にあわせ地下を後にした



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