7
「重大なことに気が付いた」

7話
それは早朝の出来事だった
「うぅーーー」
眠気眼をぐしぐしとさすりペタペタと裸足で
事務所をうろうろしていた時の事である

ガチャ

「あ、おはよーございます、クラウスさん、スティーブン」
2人が同時に入ってきたので挨拶をするなし子

「あぁ、おは…ッッ!」
「おはよ…なし子!!!」
「うぇっはい!!!」
が入ってきたとたんクラウスは明後日の方向を向き
スティーブンはなし子の名前を大声で呼んだ
「ギルベルト!」
次にクラウスがギルベルトを呼び
「はい、坊ちゃま」
ギルベルトは白いシーツを持って現れなし子にゆっくりとかけた
「は?はい???」
「き・み・ねぇ!!!」
「な、なんすか???」
ガシリとスティーブンに両肩をつかまれた
「その恰好はどうなんだい?!」
「はあ??」
わけがわからず眉間に眉をよせる
「なし子、君は…その、下は…」
クラウスが顔を赤くしてゆるりとこちらを見て聞いていた
「あ、あー…そうゆこと」
今の格好はいつもPコートの下に着ているTシャツのみである
「寝間着はどうした!!」
「え、あー…」
「支給しただろう!!痴女じゃあるまいし!」
「ち!?はあ!?失礼な!!!支給でもあんなもん着れっかよ!」
「気に入って貰えなかったのだろうか…」
「あ!え!?ち、違う違う!すんげー可愛いんだけど、
 乙女チックすぎて、恥ずかしいというか嫌だというか…」
しゅんっと俯くクラウスに白状するなし子
そう、彼女に支給されたのはかなりフェミニンなパジャマだったのである
下着はチェインが購入してくれたのことで助かってはいたが…
「だからって、キミ、その恰好はどうかと思うよ…」
やれやれと溜息をつくスティーブン
「早朝だし大丈夫だと思って一人暮らしの癖がつい…」
「とりあえず着替えて来い、話はそれからだ」
掴んだ肩をクルッと方向転換させる
「はーい」

着替えを終え戻るとクラウスとスティーブンが両脇に立った
「あ???」
「キミの好みを聞かずに手配したこちら側の非だ、
 今日は君の生活用品を買いに行こうと思うのだが」
「い、いやいや、大丈夫ですって!乾燥機あるから一日で乾くし!」
「さ、買い物にいくぞ」
「そもそも買い物に上司2人も連れてくっておかしいだろ!」
「ギルベルト、留守を任せる」
「話聞けよぉお!!」
「かしこまりました」
「ギルベルトさんヘルプ!!」
「いってらっしゃいませなし子さん」
二コリとささやかに笑ったギルベルトに送り出された


【速報】なぜか上司2人と買い物行くことになりました【助けて】


「ここは?」
「?こっちはまだ来た事なかったかい?」
「うん」
今なし子達がいるのは42街区の隔離居住区の貴族"ゲットー・ヘイツ"に来ていた
「人しかいないや…」
霧もなく天井はホログラムを使っているのだろう青空が広がっている
「唯一しっかり残った場所だからな、異界の奴らを入れないようになってる」
「へー」
路上へと車を止めた
「よし、着いたぞ」
「おぉ、結構デカイモールっすね」
「なし子、足元に気を付けたまえ」
車から出ようとしたらクラウスが手を差し出しエスコートする
「あ、ありがとうございます」
そっと手を掴み車から出してもらう
「さてと、まずは服から見ていこうじゃないか」
「支払いは気にしないでくれ、こちらで出そう」
「は、はい…」
また上司2人は両脇に構え逃がさんとばかりにモールへと足をすすめた





「これはどうだろうか?なし子」
「え、あははー…」
「キミ、それは地味すぎるよこれはどうだい?」

何ということでしょう
上司「が」あたしの服を決めようとしてます
それなりに背のある男2人、目立ってるかなり目立ってる。

因みにクラウスが持ってきたのは
胸元にはフリルがあしらわれたブラウス
そしてワインレッドのハイウエストジャンパースカート

対してスティーブンが持ってきたのは
シンプルだが地味すぎず派手すぎない
サファイアブルーのタートルネックワンピースだった

「いやいやいやいやいや、着ねーから、つか似合わねーだろ」
「似合うと思ったのだが…」
「試着ぐらいしたらどうだい?」
「えー…」
「君の力になれず面目ない…」
「うぐっ・・・・」
クラウスのしょんぼりした姿に良心がすこぶる痛む
「し、試着するだけだからな!買わないからな!!」
2人からバッと服を奪い取り試着室へと逃げ込んだ
「ははっ彼女はクラウスに弱いなぁ…」
「無理強いをしてしまっただろうか…」
「案外乗り気だし、いいんじゃないか?」
「ふむ…」
「それにしても、君がまさか一緒に行きたがるとは思わなかったよ」
「あまり、彼女と会話をする機会が少なかったので、
 こうして交友しようかと思ったのだが…難しいな」
「君が好かれてるのは確かだからそんなに悩むものじゃないよ」
僕は嫌われているからねとついでに零すスティーブン
「スティーブン、どちらかと言えば君の方が好かれていると私は思う」
「それは…」
どうゆうことだい?と聞こうとしたがそこで遮られた
「着たけど似合わなかった。以上」
なし子がカーテンから顔だけ出した
「見せてはくれないんだね」
「こんな姿似合わな過ぎて見せられません」
「そんなことはないきっと可憐な姿になっているだろう」
「クラウスさんハードルあげすぎ!」
「ずぼらな姿見られた時点で減るものなんてないだろう?」
「それとこれとじゃワケが…」
やれやれ、と溜息を吐き一瞬カーテンを掴んでいる手が緩んだ
その一瞬の隙を見てスティーブンがカーテンを開けた
「うわぁ!!!」
「やっぱりそうゆう格好も似合うじゃないか」
なし子が試着していたのはクラウスが持ってきた服だった
「お世辞はいいです!…クラウスさん?」
褒めるスティーブンに腹を立てているとクラウスがなし子の目の前まで来てしゃがみ込んだ
「やはり、見立てに狂いはなかった。とても可憐だ」
なし子の顔を見上げ柔らかく笑った。
「あ、えっと…アリガトウゴザイマス」
クラウスの真っ直ぐな視線で言われると嬉しいが
恥ずかしいことこの上なかった
「だが強要してしまったことは謝ろう、すまなかった」
「もー、謝らないでくださいよあたしの良心が痛みます」
「本ッッとに君は態度変わるな、次着てきてくれよ」
「いや、もうあっちは着たんでいいです」
「全く、見せてくれたって良いじゃないか」
「やだ」
なし子はシャッとカーテンを閉めてしまった
「…あれのどこが好かれてると言うんだい?クラウス」
「彼女自身あれが素であろう、私と話すときは壁を感じてな…
 羨ましく思ってしまうよ、」
「・・・そうかなあ・・・」
お互い無いものねだりだなとスティーブンは感じた

「とりあえず会計してきます」
試着室から戻り少しうろついた後なし子は会計すると言い出した。
「まだ全然見てないじゃないか」
「良いの別にパジャマ買うぐらいだけだったのに私服まで…」
「なし子、君は私たちに遠慮しすぎだ気にする必要などない」
「そうそう、その分働いてもらうつもりだからね」
「オイコラ」
「冗談さ、さてと支払するから君はクラウスと待っててくれ」
スイッとなし子からカゴを取るとなし子は慌ててそのカゴを自分の元に戻した
「いや、あたしがレジ行くからいいよ」
「君はクラウスと飲み物でも買っておいでよ」
「それじゃあお言葉に甘えて」
「クラウス頼んだよ」
「あぁ、承った。行こうなし子」
「はーい」



「やっぱり戻してたか」
スティーブンは2着を手にしカゴへと入れた
「これ包装で頼むよ」
「かしこまりましたっ」


「うーん、うーーーん」
「決まっただろうか?」
「マンゴー…いや、ラズベリー?おおマスカットもあるのか…あ!抹茶がある!抹茶で!」
「すみません、コーヒー2つに抹茶を1つでお願い致します」
「かしこまりましたー!お待ちください!」
「いやあ優柔不断なもんで・・・すみません」
「構わないさ」
店員から飲み物を受け取りとりあえずベンチに腰掛けた
「うまーっい!はぁぁ、抹茶うまい」
にへらっと頬を緩ますなし子
「それはよかった」
そんななし子を見て微笑むクラウス
「あ…お恥ずかしい限りです…」
「君はなんでも美味しそうに食する。こちらまで楽しくなってくるよ」
「アホな顔して食べてるだけですよ〜」
少し話をしていると
「あれ?クラっち?」
金髪美女が現れました
「K.K、珍しいなこんなところで会うなんて」
「なになに〜?可愛い子連れて〜デート??」
「いや、この前話した新しい同志だ」
「はじめまして!ななしなし子っていいます!」
慌てて立ち上がり挨拶をする。
「あっら〜!異世界の子ね!可愛い〜!アタシはK.Kよろしくねん」
「ライブラは美人ぞろいなんですね〜」
「やっだー!照れちゃうー!なし子っちよろしくね!気楽に話していいから!」
「うん!K.Kよろしく!」
K.Kとはチェインとはまた違った感じで波長が合うなと感じたなし子
そこに
「やあK.K」
スティーブンが後ろからやってきた
手には袋が抱えられている
「なによ、アンタも居たの?」
スティーブンを見るなり怪訝な顔をするK.K
「はは!僕が居ちゃいけないかい?」
「ちょっとテンション下がったわ」
「それりゃあすまないね」
そんな二人のやり取りを見てクイクイとクラウスのそれを引っ張った
「ん?どうかしたかね?」
「…二人は仲が悪いの?」
とクラウスにこそっと言った
「いや、二人はああ見えて仲が良んだ」
「へー」
「なし子、私はもう一つ飲み物を買ってくる」
「わっかりました〜」
話し込む(?)二人にクラウス達は入っていないらしく
クラウスが席をはずしたことに気が付かない。
「それにしても抹茶うまー…」
チューっとススっていると

シャランシャラン
「ん?どーした・・・・」
花嫁がいきなり出現しあるものを指さした
ふと、視界をそちらの方へ向けると
「っ!!!」





「?2人とも、なし子はどこへ?」
「「え?」」


振り返るとベンチにはジュースのカップだけが置かれた




なし子が消えた


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