5
「わぉ、めちゃ美人」

5話

とある日の午後ギルベルトさんが入れてくれた紅茶
そして暇つぶしにギルベルトさんと一緒に作ったマフィンを事務所にいた
クラウスに分け
レオの相棒ソニックと頬張りながら
まったりしているとその人は来た

「ん?」

「ほ?」

とてもとてもとてもとーーーーても美人なお姉さんが
窓から舞い降りてきました。
とんっと軽やかに床に着地すれば自然と目が合った

「え?妖精?」
「こんな真っ黒な妖精いてたまるかよ」
「ぎゃぁああ!!ザップそれあたしのおやつ!!!」

背後に現れたザップはあろうことか大切なおやつをひとつぶん盗ったのである

「おーうめーうめー」

「何してるのよ銀猿」

「あでででででで!!!!」

さっきまで窓の近くにいたお姉さんはふわりとザップの頭上に現れ踏みつけた

「どうも、新人さん?」

「はい、つい最近入ったななしなし子っていいます!」

「わたしはチェイン・皇、よろしくね」

「はい!あ、これどうぞ!お口に合えばいいんですが」

「ありがとういただくね」

「テメぇ!!クソ犬降りやがれ!!!」
そんなザップの声をBGMに
あー目の保養だぁとほくほくしていると

「全員出るぞ」

険しい顔をしたスティーブンが入ってきた。

「なんかあったんすか?」



「イギリスで血脈門の開放が確認された」




「血の眷属”ブラッドブリード”だ」


「ブラッド…ブリード?」
これまた聞き慣れない言葉が入ってきた

「説明は行きながらする、準備してくれ」
「はーい」
とりあえず最後のマフィンを口に詰めた



「つまり要はあたしの知ってる吸血鬼とはまた違う吸血鬼ということですな?」
スティーブンの車に促され
読めと渡された分厚い資料しかも英語ふざけんな
とりあえず読める単語を抜き出してかいつまむと
吸血鬼ということですねハイハイ
「そうなるな、階級が高いにつれ相手は強力になる」
「階級なんてのもあるのか」
「あぁ、長老級”エルダー”と呼んでいるがそいつらは滅殺が難しく
 クラウスの術による密封でなんとかなっている」
「ほー、」
「…奴らに君のスタンドや波紋が
 効かない場合があるだから今回は後方でレオの支援を頼む」
「りょーかい」
「さ、急ぐぞ」
グッとスティーブンはアクセルを踏みなおした。


「いやあこれはまた…」
「凄い荒れようだな、」
見渡す限り瓦礫、瓦礫、瓦礫
ほとんどの建物が原形をとどめておなかった

「これ直すのにいくらかかるんだろう」
「この状況で思うことがそれかい?」
やれやれと溜息をつく

「さてさて、クラウス達は反対側に到着済みだろうクラウス達と合流次第
 君はレオの支援を」
「はいはーい」
「返事は一回」
「はーい」


合流ポイントに近づくと惨状は益々ひどくなっていった

「居た。気を引き締めろよ」
「うぃーす」
作戦はいたってシンプルで血の眷属を挟み撃ちというもの
「僕が動いたら君はレオの元へ」
「了解。加護があらんことを」
返事をした後チラリと盗み見て気休め程度だが危なそうなフラグを壊しておく

そして向う側に見えるクラウスが動き出すとともにスティーブンとなし子も動き出した

「やあ!レオ君さっき振り!調子はどうかな?」
「すこぶるガクガクしてる!」
「安心しろよババアが守ってやるよ」
「惚れる!!!」
そんなやり取りをしながら最善な場所へとレオを連れていく
レオは血の眷属を目を見開いてじっと見ていた
その開かれた目は青白く光り本来人間では白目であろう部分も青かった
「綺麗…」
なし子はレオの瞳を初めて見てそうこぼした
「よし、わかった!!!」
そしてレオは携帯を取り出しすごい勢いで打ち込んでいく
「クラウスさんッッッ!!!」
レオから送られてきたメールを受信しその文面をクラウスは読み上げる
「やれ!クラウス!!!」
ペキリ、スティーブンが繰り出した技が血の眷属の足元を捉え凍らせる
「フェアブレッヒャー・ファアトライブング・レヒト、貴公を密封する」
ドスッとナックルを突きつけ
「ブレングリード流血闘術999式

久遠棺封縛獄"エーヴィヒカイトゲフエングニス"ッッ!!!」


真っ赤な糸が眷属を縛り付けそれは十字架へと姿を変える
最後のあがきか眷属はレオとなし子ギョロリと視線を向け

シャラン

「っ!!まずい!レオ!!こっち!!」
「え」

なし子はつかさずレオの腕をつかみ自分の方に引き寄せる
そして薄い膜が瞬時に張られた

次の瞬間


ドゴォオオオ


鋭利な何かがかすめた


よく見るとそれは伸ばされた爪だった

それはレオの居たところに突き刺さった
突き刺さってもなお止まらず地面の中からボコりと出てきた
こちらに向かってくるが薄い膜が爪を阻む

が爪の勢いは止まらない

「レオ!!なし子!!」
「クラウス!君はそのまま続行してくれ」
クラウスが叫びスティーブンがこちらに向きを変えた


「…このままじゃ壊れるな…レオ、動くなよ」
「何する気だよ」
「言ったでしょ守ってやるって」
なし子は膜から手を出し襲い掛かる爪を掴んだ
「っ!」
爪は伸びることをやめず掴んだなし子の掌の皮をブツリと裂く
「おんどりやぁああああああ!!」
グッと握りしめ手に波紋を込め爪を折った
波紋を浴びた爪はジワジワと溶けていったが次の瞬間それは再生を始めた

「っ!!!」

爪は真っ直ぐなし子の額めがけて伸びた



「絶対零度の盾”エスクードデルセロアブソルート”」


うわ、これ死ぬと思ったなし子と爪の間には
分厚い氷の壁ができていた
爪の勢いも鈍くなった
「オラァ!!」
追い打ちをかけるかのようになし子はもう一度
派音を叩き込んだ
爪は力を失いボトリと地面に落ちた。

その後無事本体は密封された


レオとなし子の周りにはドクニンジンの花が咲き誇っていた



「いやあ大したもんだ君をレオの補助に回してよかったよ」
「ホントに思ってんのかよ」

あの後レオとクラウスにはめちゃくちゃ心配された
病院へ行こうといわれたが手が少し裂けたぐらいで大げさだと
押し切りギルベルトさんに丁寧な手当を施してもらった。
他のメンバーはもうとっくに帰ってしまったがスティーブンは
今日中に報告書を仕上げたいとのことで残っていた。

「本当さ、今回の件で少なからず波紋が血の眷属に通用することがわかったな」
「すぐ再生するもんだからちょっとビビりましたけどね」
「それでも君はレオナルドを身を挺して守ってくれたレオを守ってくれてありがとう」
「・・・・」
「?どうした?」
「いや、悪寒が…」
感謝の言葉を言われるとは思わず両腕をさするなし子
「キミ一回凍ってみるか?」
「遠慮しておきます」

「それにしてもなんで最初っからレオと行動させてくれなかったんですか?」
ふとした疑問をスティーブンに投げかけた
「基本ツーマンセルで組ませているし、なにより君は今、僕の監視下だからね」
「なんすかそれーまだ疑ってたのか」
「いや、もう疑ってはいないよ、疑ってたら昼の買い物も頼まないし、
 さっきも助けないだろ?」
「そうだけど、じゃあなんで…」
「おじさんの気まぐれさ」
トンと紙の束をまとめるスティーブン
「はあ?」
「そんなことよりも、手の方は大丈夫かい?」
「あ?あぁ、これぐらいの傷なら慣れてるので」
なんかはぐらかされた感満載だけど突っ込まないことにした
ヘラリと笑って手を振ってみせる
「慣れてるとはいえ傷ものにするんじゃないぞ、君は女の子なんだから」
「は?」
「じゃ、僕は帰るよ、お疲れなし子」
ポンと頭に置かれるスティーブンの手
置かれたのは一瞬で通り過ぎるついでに置いた感じだった
「早く寝ろよー?」
「餓鬼扱いスンナ」
「はは!おやすみ」
「お疲れさんしたー」
パタンとドアが閉められた

「名前…」
初めて呼ばれた
今まで『キミ』か『お嬢さん』で呼ばれていたから壁を感じていたが
今名前を呼ばれて本当に疑っていないんだなと確信した
「つか、んだ今の」
一瞬とはいえまだ手の感触が残る頭を自分の手で撫でた。
「シャワー浴びて寝よう」



「・・・・」
ドアを閉めた後スティーブンは自分の手をジッと見つめていた
握ったり開いたりもした
「気まぐれ…か、」
さっき自分でも馬鹿げてる理由だと思った「気まぐれ」という言葉
確かに最初からレオナルドとなし子をペアにしたってかまわなかった
だがそれをしなかったのは監視しているというものもあったが
彼女をそばに置いておかなくてはというわけのわからない使命感
ふと思い浮かぶのは自分が死ぬかも知れないのにジッとあの爪を見ていた瞳
お世辞でも綺麗とは言えないヘラリと笑った顔
「……案外気に入ってるのかもな」
ふっと鼻で笑い彼は車へと歩き出した。

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ドクニンジン花言葉
あなたは私の命取り


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