ダリア(信長)







※現パロ(生温い裏)









渋滞してしまった夜の高速。



助手席に座っているものの、私たちの間に会話はない。

聞こえてくるのは微かにかかっているラジオの音楽だけ。

車内の空間とは対照で騒がしく、それが余計に私たちの空間を冷たくさせた。



「・・・」



つまらない。



車の外の世界もまた、騒がしいくらいにネオンが煌めいていて、目で追って文字を読んでみたり街行く知らない人たちを眺めてみてもつまらないだけで、余計に気分が下がるだけだった。

隣を盗み見てみても、精悍な横顔は笑顔一つなく、ただ真っ直ぐを見ているだけ。

薄い唇から告げられる言葉もない。



初めは、この人についていったら何かおきるかな?なんてちょっとした好奇心にも似た何かが芽生えたけれど、蓋を開けてみたらただ抱かれて弄ばれるだけだった。


でも、その生温い関係が気楽で、この関係が成り立ってからもうどれだけ経過したのかわからない。

気楽で、でもつまらない。




「・・・帰るわ」



渋滞しているのをいいことに、ドアを開けて外の世界に飛び出した。

ヒールを鳴らして、ネオン街に飲み込まれてゆく。



止める声もなければ、クラクションの音すらもない。

きっと、あなたは私の存在なんてどうでもいいのね。





所詮、私は"二号さん"なんだから。







「もしもし?私」





あれから数日後。

私たちはまるで何事もなかったかのように再会した。


いつものように掻き抱かれて、息が途切れるんじゃないかってくらいに突き上げられて、口付けをした。

お遊びの愛の言葉なんかを囁いて、偽りの愛の契りを交わした。



「クク、もう終いか」

「悪いけれど貴方みたいに絶倫じゃないもの。勘弁してちょうだい」

「・・・来い」

「あぁっ、もうっ、終わりだってばぁ」

「狂え、燐よ」



頭がおかしくなるんじゃないかと思った。それくらいぐちゃぐちゃにかき乱された。

どんなに嫌がっても押し付けられて、これでもかというくらい突き立てられた。



体はあちこち痛いし、声だってがらがら。


最悪ね、もう動くのだって億劫よ。




「動けないんだけれど」

「・・・クク」


「ごまかさないでよ」

「愛い奴よ」



ベッドで横になる私を何を思ったのか、信長は抱きしめて仕舞いには頭を撫で始めた。


・・・明日、槍でも降るんじゃないの。

一体、何のつもりなの。



私は"一号さん"じゃないのよ?



「眠れ」

「なんで」

「疲れたのであろう」

「誰のせいよ、誰の」

「信長であろうな」

「ちゃんと自覚はあるんじゃない」

「クク、褒美に傍にいてやろうぞ」

「・・・は?」

「朝まで、ぞ」





最悪、本当に最悪。





こんなんだからイヤなのよ。


どうして捨てないの。

どうして気楽な関係のままでいないの。




どうして、そんな優しい顔をするの。




いつもみたいに使い捨てないの。

いままでの生温い関係はどうしたの。





「いなくならない?」

「嘘はつかぬ」

「そう」

「眠れ」


「・・・いなくならないでね」









でも、一番最悪なのは私、ね。


たとえ、一時の愛でも享受してしまったんだから。







end

(裏切り)

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