モンスターワールド(甘)







お題サイトDOGOD69様より









どういうこったい。



「ワアァアァア!!」

「進めええぇええ!!」



私の部屋はどこへ消えた。

私の持っていたバッグはどこだ。



どうして目の前が戦場になっちゃってんだ。



「いやいやいやいや」


戦場になっちゃった☆とか可愛く言えば済む問題じゃあない。

なぜなら、今は平成で目の前に広がる戦場なんて光景はありえないからである。


「はっ!ドラマか!!」


きっとそうだ。

これはドラマの撮影か何かだ。

うん、そうに違いない。


さてさてカメラさんはどこかな、監督さんはどこかな。

・・・俳優さんはどこかな。


「あ、あはは、おっかしいなあ〜。見れど見れどそんな人いないんですけれど〜・・・はっ!夢か!!」


きっとどうだ。

これはドラマの撮影ではなく、夢か何かだ。

うん、そうに違いない。


さてさてそろそろ朝になって、いつもの部屋で目が覚めるんだけれどな。


・・・目が覚めるんだけれど、な。




「・・・ノオオォオオォオ!」




やっぱマジなのか!?

必死に現実逃避しまくったんだけれど、やっぱりマジは変えられないのか現実なのか!!





「そこにいるのは誰だ!!」




ああああああああ!?


まさかまさかこれは・・・



「む、間者か!」



見つかったああああああ!



「ち、違いますーーー!」

「!待て!!」


とりあえず逃げるしかない。

逃げる→疲れる→捕まる→処刑!?


それだけはなんとかしないといけない。

脚ががたがたになりそうな気もするが、なんとか逃げ切ってやろう。


火事場の馬鹿力とはこういうものなのか、と思うほど不思議なくらい私の脚は速く進んだ。

これなら運動会だって一等賞を狙えそうなくらいだ、なんてどうでもいいことを頭の片隅で考えながら走っていると、いつの間にか私を追いかけていた男達の怒声は聞こえなくなっていた。


「ハァ・・・ッハァ」


ふと我に返った瞬間、必死すぎて忘れていた疲れがどっと押し寄せてきて足からぐらりと倒れ込んだ。

ぐう、顔から倒れるって女としてどうなんだ。ぺしゃんこな顔が余計どうしようもない顔になってしまうじゃないか。


「・・・まずい、起き上がれない」


これはもしかしなくても絶体絶命ではないか。

もし、またあの男たちに発見されたらどうしよう。寝転がったまま串刺しで処刑されるかもしれない。



「・・・あれ?」





・・・・・・今、もしかして


後ろから声が聞こえなかったか?





「もしもーし、生きてる?」

「!?」

「あ、生きてる」





ぎゃああああ

まさか前に回り込まれるとは!



・・・・・・少年?




「あのさ、今すごーく失礼なこと考えてるかもしれないんで言っておくけど、俺さ君より目上だからね」

「・・・え」

「なーんだ、話せるんじゃん。俺、竹中半兵衛ね。君は?」

「あ、九条燐です」

「九条?へえ、君って苗字あるんだ。どっかのお姫様?」



確かにこの辺じゃ見ない格好だしね、なんて言ってるけれど、その前にこの方お姫様とか言った?

え、やっぱ昔なの?



「にしても変な格好だね?南蛮から仕入れたの?」

「いえ、そういうわけではないんですが」

「・・・・・・ふーん」


うわあ、めっちゃ怪しんでる。

あの目はめっちゃ怪しんでる。


・・・まあ、そりゃあそうか。見慣れない格好だし(現代の洋服だからね)さっきみたいに兵隊みたいな格好もしていないし、武器も持っていないし。

そもそも、この時代(?)のお姫様ってみんな紫式部みたいな顔と格好しているんだろうし。

ていうか、そもそもお姫様だったらこんなところで地面に這いつくばってなんかいない。


「ま、いっか。とりあえず・・・よーいしょ」

「ぎゃっ」


試行錯誤している間に竹中さん?は私を担いだ。つーか俵担ぎかよ。

いや、ツッコミ所はそこじゃなくって、私をどうするつもりなんだ、この少年。



「燐ちゃんだっけ?今から秀吉様のとこにいくからね」

「秀吉!?」

「うん。だって俺、秀吉様のとこの軍師だし」



秀吉ってもしかして豊臣秀吉?

え、あの歴史の教科書に出てくる?サルとか言われた?太閤?



「じゃあ、いっくよー」

「えええっ、ちょっ」

「大丈夫大丈夫。秀吉様って結構?かなり?寛大な方だからさ、連れてきていきなり切り捨てることなんてしないからさ。それに君は今から俺の婚約者ね」

「ああそれなら一安心・・・じゃなくて!」

「何?」


「いやだから今婚約者って言いました!?」

「うんそう」


「はあ!?何故に!?」

「いやー、実は前々から秀吉様に結婚はまだかってさんざん言われててさ、それで」

「つまり偽物になれと?」

「そ、だからさ」






俺と結婚してよ、






「・・・ときめいた?」

「ば、馬鹿!んなわけないでしょーが!」

「あはは、かーわいいー。こんだけ可愛いなら本当に婚約者にしてやってもいいね」

「ええ!?」

「あはは、冗談」

「・・・そーですか」

「何?残念だった?」

「違います、もう疲れただけです」

「まあそれもそうか。あんだけ走ってたもんね」

「・・・見てたんですか」

「うん、違いますーのとこから」




最初からじゃねーか。




「(チクショー)・・・見てたなら助けてくださいよ」

「いやあ最初は助けようかな?って思ったんだけどさ、案外君走るの速いし、見てて楽しかったからさあ」


なんなんだ、こいつは。

人が命の危険にさらされているのに楽しかったからだと?

性善説はどうした、性善説は。


「ま、何はともあれ生きて俺に拾われて良かったね」

「・・・そうですね」

「いやあ、それだけじゃなくって俺の奥さんになれるだなんてね。一生安泰だよ、奥様」

「・・・そうですね、旦那様」

「あ!それいいね、もっかい言ってよ」

「・・・」

「えー、もうなし?えーいいじゃんもう一回くらいさー?それかお前様でもいいよ?」

「・・・」

「え?もしかして死んだ?」


「生きてます」









もう、いやだ。



なんなの旦那様って。




なんなのこの人。



なんなのこの世界。








end

(変な世界にて)
(私を拾ったのは変な人でした)

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