廃棄された日常(甘)
お題サイトDOGOD69様より
「ねーねー」
「ねーってばー」
「ねーー」
「・・・(うるさいなあ)」
最近、生活が変わりました。
いや、根本的なところは変わっていない。
偵察したりとか、密書を運んだりとか、暗殺したりとか。
けれども、周りに人間が変わったというか・・・周りに人間がいるようになった。
「今日も暗殺?大変だったねえ。誰やってきたの?」
「・・・」
「その前は尾張の信長さんのところに密書運んでたよねえ?」
「・・・(どうして知ってるんだろう)」
「あ、今どうして知ってるんだろうって思った?だめだめ俺の情報網を見誤っちゃ。龍興様は気付いていないかもしんないけれどさ、齋藤家・・・そのうち潰すんでしょ?」
「・・・(喰えない軍師)」
なぜか、齋藤家の軍師である竹中半兵衛がまとわりつくようになった。
最初は情報でも探りに来たのかと思った。最近の此奴は何か行動が怪しいから。
・・・いや、元から齋藤家に忠誠などしていなかった分、最近ともいいきれんが。
「貴方は良いのですか」
「何が?(あ、喋った)」
「齋藤家が滅びても」
「まあね?道三様と違って龍興様はどこか抜けてるからなあ。俺が頑張ってもそのうち、ね」
「・・・」
おそらく、織田は此奴を取り入るだろう。
向こうには姫様もいるし、明智殿も此奴も使える駒になりえるだろうから。
・・・此奴が織田を気に入るかは別として。
「ねーねー、信長さんってどんな人?」
「・・・」
「えー、まただんまり?ねー、せっかくだから教えてよ」
「・・・(話すんじゃなかった)」
どんなに無視しても話しかけてくるし、仕事だ何だと此奴を撒いても先回りしていつの間にか私の前に現れる。
一体何なのだろう。
何を企んでいるのだろう。
「ねー、君の名前教えてよ」
「・・・」
「教える義務はないってことかな?まあそうだよね。俺の部下じゃなくって、君は龍興様の部下なんだもんね」
「・・・」
「まあ、俺には関係ないんだけれどね?」
「―――ッ」
一瞬、気を抜いた自分を呪ってやりたい。
腕を引かれたと思ったら、私の目の前には此奴の端正な顔。
その後ろには天井。
私の背中には、畳。
私は、押し倒されているのか。
「へえ、動じないんだ」
「・・・」
「これでもだんまりかあ、ざーんねん」
ちっとも残念だと思っていないくせに、口元が笑っているぞ。
一睨みしてやれば、案の定ふふと笑い出した。
「うーん、やっぱり難しいなあ。君は」
「・・・」
「難攻不落の城って知ってる?どーんな策略を練っても、どーんな炙り方をしても絶対に落とせない城。攻略する側としてはさぁ、軍師の腕の見せ所ってわけ」
難攻不落の城。
今の状況から判断すれば、十中八九私のことなのだろうな。
「君もお察しの通り、難攻不落の城は君のこと。俺はその城を落とす、軍師ってわけ」
「・・・ふん」
「やーっぱり君はいいね。それでこそ落とし甲斐がある」
楽しみにしてて、私を押し倒していた此奴は端正な顔を歪ませて、笑いながら去っていった。
ほんの一瞬、私に口吸いを残して。
end
(そろそろ、本気でいこっかな)
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