トランプの4人(義)




お題サイトDOGOD69様より




※三成というか義三人の夢
  が、三成が出張っている
 





鋭い刃のような彼


愛を重んじる彼


輝く英雄の彼





わたしは−−−





「はっは、今日も鍛錬か?燐、幸村」

「「兼続(殿)、」」

「随分長いことやってるようだな、ちょっと休憩しないか?」


燦々と太陽の光が降り注いでいる広場で、幸村と燐は互いの槍の腕を競いあっていた。もっと強くなれるように、もっと大切なものを守れるようにと。

そこに、美味い団子がある、と直江兼続が現れた。二人から流れ出ている珠のような汗を見て、豪快に笑うと手に持っていた団子をちらつかせた。


「そうですね。せっかくですし、いただきましょう」

「そうね。三成ー!いつまでそこにいるのよ!さっさといらっしゃい」

「大声を出すな、馬鹿」

「なんですってー?」


兼続と共にやってきたのか、少し離れた木陰に座っていたのは石田三成。

己の名を叫ぶ燐に毒を吐きつつも、満更でもないのかその表情はすこしばかり穏やかである。


「うわあ、おいしそー」

「ふん、あたりまえだ。謙信公お墨付きの越後一美味い団子を持ってきた」

「さ、食べましょう」

「おい、遠いぞ」

「え?腕の長い三成ならだいじょーぶでしょ?」

「限度があるだろう、馬鹿」

「ああ!また馬鹿って!」

「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い」

「まあまあ、三成殿。せっかく兼続殿が持ってきてくださったんですし、出来たてのうちに食べましょうよ」

「ふん、言われなくてもわかっている」

「燐もだぞ」

「・・・へーい」


互いに目から火花を出しそうなほどににらみ合う燐と三成。その姿に苦笑いする幸村と説教でもしそうな兼続。

4人で食べていた団子はあっという間に減っていき、量が減ると同時に4人の会話はどんどん弾んでいく。

といっても話し続けるのは専ら兼続と燐で、その話に相づちを打つ幸村、時折毒を吐く三成はどちらかといえば静かだ。


「そしたら秀吉様がね、またおねねさまに怒られたんだよ」

「まったく、あの方は・・・」

「でもその明るいところが秀吉様らしいですね」

「うむ、多少義に反するところはあるが、あの明るさは皆を元気づけてくださるな」





「・・・秀吉様のおかげなのかな」

「燐殿?」


弾んでいた会話のなか、燐はふと不安を感じた。

この団らんも平和も、秀吉が統治しているからであって、いつか壊れてしまうのではないか、と。


「今の天下は秀吉様がいるからみんな一緒になってる。でも・・・秀吉様だって永遠に生きてるわけじゃないじゃない?」

「それはそうだな。天下は秀吉殿が統一したが、またいつ群雄割拠の時に戻るかはわからん」

「ああ。徳川もこのままとは思えんからな」


そうだよね、と静かに落ち込んでゆく燐。

今はいっしょにいるけれど、また群雄割拠の世になったらそれが永遠とは限らない。

今は手を取り合う仲間だけれど、刃を向けることになるかもしれない。


「燐」


三成が名を呼んだ。

いつもの凛とした声であった。


「俺たちは友だ」



義で結ばれた、友だ。



「たとえまた群雄割拠の世となっても、また互いの手を取り合えばよいだけであろう」

「そうですよ、燐殿。私たちが力を合わせればきっと戦火の塵に飲み込まれることなどありません」

「それとも何だ、燐は我らが力を合わせて幾多の戦を乗り越えてきたのを忘れたのか?」


三成、幸村、兼続。

三人の力強い言葉が、まっすぐと燐に届いた。その言葉に迷いはない、そう示すかのように。


「三成、幸村、兼続。本当にあなたたちと友で良かった」

「ふん、いきなり何を言うかと思えば」

「はっはっ驚いたぞ。お前がいきなり顔をしかめだしているからな」

「はは、本当に力強い仲間を手に入れたみたいね」

「燐殿も私たちにとっては力強い仲間ですけれどね」

「この間なんて熊を仕留めたくらいだからな」

「ちょっと!それちょっと意味違ってこない!?」

「なに!?熊をだと!!」

「兼続もびっくりしないでよ!!」

「とても鮮やかなお手並みでしたね」

「幸村も!ノらないでよ!!」


さっきまでのしんみりとした雰囲気はどこにいったのか。

またぎゃーぎゃー騒ぎながら会話をしはじめた4人。


騒がしいながらも穏やかな雰囲気が流れるそこは、戦のことなど忘れてしまいそうなほどに笑みが溢れていた。




この三人と友でよかった、


燐は笑みが自然とこぼれるのを感じた。








―――願わくば、この幸せが続くように。


end

(私は、友を守る)

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