また会えたらきっと(微糖)






お題サイトDOGOD69様より









お笑いになるでしょうか。


こんなにもお慕いしている私は、滑稽ですか。




「燐さーん、お願ーい!」

「はーいっ」



ばたばたと慌ただしい朝。

毎日毎日ご飯を作って、お洗濯をして、お掃除をして。


お城の女中たちにとっての朝は、まるで戦のようです。



「よしっ、がんばるぞーっ」


私が生まれた家には庭なんてなかったのだけれど、ここはお城。

私の家よりも大きなお庭がいくつもあって、そこには色とりどりの花や木々が生きている。


もちろんそんなにたくさん植物を植えていれば、落ち葉もたくさんあるわけで。

早朝に片付けるのが、私の朝イチのお仕事。


かき集め終わると、落ち葉たちは立派な山になるわけで、次はそのお山を片付けるのがお仕事。

気が付いたら、お昼になるのがいつもの日課。


「ふえっくし」


やっぱり寒いなー、なんてお天道様を眺めるとあの時間が近づいてきていることに気が付いた。

毎日毎日続くお仕事を癒す、私の一番大事な日課。


「まだかな、まだかな」


お庭から見える書斎へ続く廊下。

静かな足音が聞こえてきたら、合図。


枯れ葉を集めながら、近付く気配を感じながら素知らぬふり。


「おはようございます、石田様」

「ああ、御苦労」




ああ、今日も素敵。

絶対に届かない崇高な貴方。




「・・・緊張したーっ」


交わす言葉はいつも同じ。

挨拶と労いのお言葉。


それでも、幸せだと思う私はおかしいでしょうか。


「〜♪〜♪」


さっきまであまり動かなかった箒がすいすい枯れ葉たちを集めていく。

ほんと現金な私。


たったひとつふたつ言葉を交わしただけなのに。

こんなにも舞い上がってしまっているだなんて。


「燐ちゃん、集め終わったー?」

「あ、お菊さん。ちょうど終わったところですよ」

「じゃあ運ぼっか」

「はいっ」


手がかさかさになってしまう作業だって、なんのその。

あのお姿を思い返すだけで、がんばれるんですもの。


「あれ、燐ちゃん。良いことでもあった?」

「はい?」

「気のせいだったらごめんね。なんだか嬉しそうだったから」

「うふふ、内緒です」

「あら、残念」

「乙女の事情です」

「あ、そうだ。これ終わったら配膳手伝ってね」

「はい、わかりました」

「ちゃんと石田様のは燐ちゃんに運ばせるから」

「・・・えっ!?なんでっ」

「うふふ、さあもうちょっとよ。がんばりましょう?」



乙女の事情、でしょう?


そう片目を瞑るお菊さんに、ありがとうと言うとまた笑われた。



「緊張して落とさないようにね」

「はは、自信ないです」





ああ、手がふるえてしまいそうだ。




火照る頬は北風のせい。


ふるえる手は寒さのせい。


高鳴る鼓動は・・・?







end

(石田様、失礼します)
(入れ)
((・・・緊張する))

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