封じたのは想いだけ(微糖)







お題サイトDOGOD69様より








ドウン、ドウン


ワアァアァアアア



ガチャリ、ガチャリ





広い広いこの大地には、かつて小さな動物が静かに暮らして、色鮮やかな絨毯のように花々たちで埋め尽くされていた。


それが、一月前。


けれども、苛烈なまでの勢いはそれらを飲み込み、小鳥たちのさえずりは銃声に、童たちの笑い声は断末魔に、そよ風に花々が揺れる音は鎧が揺れる音に変わった。


たった、一月前のこと。




「燐」

「・・・頭領」

「よせよ、今は戦の真っ直中じゃねえ」

「すみません。孫市さん」


あれほど美しかった大地はどこに去ってしまったのか。

いや、奪ったのは我々だ。


「今日の戦、素晴らしいお手並みでした」

「お前だって負けてねえだろう」

「私は貴方ほどではありません」

「怪我はしてねえか」

「かすり傷程度です。まだ戦えます」

「そうか」

「ええ」

「・・・帰るぞ」


いつからだろうか。

一歩前を歩く彼の背に、火縄が見られるようになったのは。

火縄を背負う彼の背を追う私も火縄を握るようになったのは。


「燐、絶対に帰るぞ。俺たちの家に」

「ええ、勿論」

「それまではすまねえ。何も言わねえで俺に付いてきてほしい」

「はい」


本来の夫婦の姿とは違うかもしれない。

けれども、絶対に振り返ったりはしない。

絶対に後戻りもしない。


「頭領、これからもよろしくお願いしますね」

「何だよ、いきなり」

「ふふ、いいじゃないですか」

「ったく」


いつか、また。

穏やかな日だまりの下、

ふたりで歩けることを想い。



甘く、優しい

毎日に戻れるように。






それまでは、

心の奥底に。






必ず帰るために。








end

(それが妻の役目)

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