少しの段差も越えられない弱気な私は(甘)







DOGOD69様より








「姫様、姫様」

「多惠ったらそんなに急いでどうしたの?」

「コンペイトウなるものを城下にていただいたので、姫様に是非と思いまして」


きらきら輝く金平糖

それは赤、黄、白と色鮮やかで、城下に出たこともない私には金平糖の輝きがまるで知らないもののように思えた。


私の知らない世界。

きっと金平糖のように、私には知らないものがたくさんある。


けれど、私にはそこへ歩を進めることもできない。

いつか知らない殿方の元へ嫁ぐまで、きっと変わらない。


この城は、私の籠。


「城から眺めることはできるのだけれど・・・」

「燐様・・・」

「多惠が気にすることではないよ!それよりも、今日もお話をきかせて?」

「はい!では今日は城下で躍っていた女の話を」


多惠は私付きの世話係。

私と違って、城下にも行くし、いろんな世界の物事を知っていて、毎日のお仕事は大変ではあるけれどもとても楽しそうだった。

遣いに城下に出ては、いろんなことを私に教えてくれる。


「そういえば姫様。今日はお客様がいらっしゃるみたいですよ」

「どなたかしら。どこかのお殿様かしら」

「あ、あの方ではないですか?ほら」

「え、どこ?」


多惠が指を指した方を見ると、一人の男性がいた。

私の父と談笑しながら、中庭を歩いていた。


「きっと、父に中庭の自慢をされているんだわ」

「殿はあの中庭がお好きですからね」

「ええ、私も何度も説明されたことがあるわ」

「ふふ、私もです」

「!!」

「ひ、姫様?」




い、今。


たしかに瞳が合った。




「多惠、今」

「はい?」

「目が合ってしまったわ」

「あの方とですか?」

「微笑まれたの」

「ふふっ」

「え、なに?」

「いいえ?」









姫様、お顔が赤いですよ





これから始まる予感


これから飛べる予感



end

(こんにちは、お姫様)
(あ、あなたは…きのうの)

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