君の瞳に恋してる(市丸/甘)
※枇杷様リク
毎日
いや、毎時間のように感じる
鋭い刺すような視線
隠すこともなく、
ずっと私を見ている(気がする)
最初は他の人かもと思い、周りの動向を見ていたのだが
誰も表情を変えることもなく当たり前のように生活している(どうやら気がついていないみたい)
「うーん、不思議」
「燐ー」
「あ、阿散井君。お疲れ様」
「おう、お疲れ。これ、朽木隊長から市丸隊長に」
「うん、渡しておくね」
まただ、鋭い視線。
「お前んとこは相変わらずすげえ書類の山だな」
「あはは、もう慣れたよ」
「吉良の奴も年々疲れ切っていくように見えるし」
「ほら、吉良君は心配性だから」
「ま、お前もあんまり気張りすぎるなよ」
「ありがとう、阿散井君もね」
「ああ、じゃあな」
「うん」
最初は誰かのファンクラブの子に恨まれているのかと思った。
今のように、阿散井君や吉良君(同期)ともおしゃべりするし、その繋がりで檜佐木先輩ともおしゃべりするから、それ誰かのファンクラブの子かと思っていた。
みんな人気者だし。
けれどもどうやら違うみたいで、有名な席官の方だけではなく、いろんな人と話をしているときに視線を感じる。
「うーん、不思議」
「燐ちゃん」
「い、市丸隊長っ!お疲れさまです」
「おつかれ」
ぼーっと誰なんだろうと考えていると、ふいに耳元で特徴のある声が聞こえた。
お願いですから、気配を消して後ろに立たないでほしいです。
「なんか、悩み事でもあるん?」
「え?」
「ぼーっとして」
「いえ、たいしたことじゃないんです」
「そか、なんかあったら言うんやで?」
「はい、ありがとうございます」
「それで・・・あんな、燐ちゃん」
「はい?」
「墨、垂れとるで」
「え・・・?」
ああああぁあぁああぁあ!
「く、くち、朽木隊長からのしょ書類っ」
「ああ、構へん構へん」
「でもっ」
「内容だいたいわかてるから、気にせんでええで」
「・・・はい」
「今日はもう帰り?疲れとるんやろ?」
「で、でも」
「明日、虚退治があるんや。ちなみに朽木隊長から来たそれが書類なんやけど、それに燐ちゃんも連れてくさかい、今日はもう休み」
「ほ、本当ですか?」
「ほんまほんま」
なんだか久しぶりの虚退治だと思うと気持ちが少しだけ回復した。
「気をつけて帰り」
「はい、お先に失礼しますっ」
「お疲れさん」
ひらひらと手を振っている市丸隊長におじぎをし、自宅へ戻った。
気が軽くなったのか、足取りは軽かった。
「やあっ、はっ」
「燐ちゃん、そっち行ったでー」
「はいっ」
虚退治当日。
思っていたより虚の数は多く、斬魄刀でいくら斬ったのかもう覚えていないほどだった。
「破道の三十五、蒼火墜!」
「グギャアアァアア」
そのときだった。
(・・・また?)
感じる、あの視線だ。
おかしい、今日は誰とも…?
(あ、市丸隊長と話した)
もしかして、市丸隊長のファンクラブの人!?
そう思えば合致するかもしれない。
ずっと視線を感じていたのは、私が三番隊にいて尚且つ上位席官でもないのに隊長と吾話しているからだ。
そうに違いない。
「九条、いったぞ!」
「はい!」
いけないいけない。
今は退治中だ。
一瞬でも気を抜けば、待つのは死。
そう思うと少しだけ背が冷たくなった。
「来い!」
一緒に来ていた九席と虚に向かって刃を向けると、何を思ったのか虚はこちらを威嚇したまま動かなくなった。
「九条、気ぃ抜くなよ」
「はいっ」
ぴしり。
頬に痛みが走ったと思ったら、私の側を刃が走っていた。
「市丸、隊長?」
市丸隊長の神槍だ。
私のわきを通り抜け、神槍は虚を貫いていた。
「あかんなあ、虚はさっさと倒さんと」
「す、すみませんっ」
市丸隊長はいつの間にか神槍を仕舞い、いつものように私の後ろに立っていた。
「堪忍、嘘や」
「え?」
「燐ちゃんが他の男の毒牙かからんように出来る思て連れてきたゆうんに」
「どういう意味ですか?」
「そないに一生懸命に虚を見つめとるんやもん。かなわんわあ」
いつも笑って見えない紅い瞳がちろりと見える。
その瞳にとらわれたように、視線が外せなかった。
この瞳だ。
あの鋭い視線は。
直感的にそう思った。
「ほな」
「あ、え」
足が動かない。
声が出ない。
聞こえるのはうるさい心臓の音だけ。
「ああ、忘れとったわ」
―――見つめるん、ボクだけにしたって?
end
(置いてくぞー)
(あ、今行きます!)
((どのくらいボーッとしてたんだろう))
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