05

2日なんてあっという間で、今日の夜時間にはエグイサルに殺される……。

それなのに今、私は茶柱さんに頭を撫でられている。

「はあ……。転子は考えたのです、戦わずしてどうアイツ達を倒すのか。しかし答えは見つかりませんでした。今日、転子はいざとなったら女子の盾になり、戦おうと思います」

こんな風に私達のことを真剣に考えてくれているのだ。私にできることがこれなら甘んじて受けよう……。
照れくさいけど悪い気はしない。

「それにしても名字さんをなでているととっても幸せな気分になりますね……! おこがましいですが……ずっと撫でていたい気分です!」
初めてこんなことを言われた私はどう返したらいいのかわからず言葉に詰まる。思えば動物を撫でることはあっても自分が誰かに撫でてもらうことなどなかったように思う。
それがどうしたことかここに来てから既に3人もの人間に頭を撫でられた。内1人は勘違いで撫でられたのだが……。

「ありがとうございます……」
「冗談ではなく、本当に心が満たされていくようです。名字さんが動物に好かれるのも分かります! むしろ名字さんが小動物みたいでとても癒やされますから!」
これは……褒め言葉として受け取っていいのだろうか……?

私が大人しく茶柱さんに撫でられていると、夢野さんが食堂に入ってきた。そのまま私の隣の椅子に腰を下ろした。
ふと茶柱さんの手が止まる。
どうしたのかと茶柱さんの顔を見上げると、彼女はわなわなと震えながらこちらを見ていた。

「夢野さんと名字さんは地上に舞い降りた天使ですか!? 可愛らしいお二人が並んでいる姿は尊すぎて、転子、これは夢なのではないかと錯覚してしまいます!」
「ウチはかわいらしいのが売りじゃからな」
夢野さんはふっふっふと笑うと机に突っ伏して寝てしまった。


タイムリミットが迫っているにも関わらずどうしてこんなに落ち着いていられるのだろうと自分でも思う。
人と触れ合うことでも不安を和らげられるのだ。


暫くして百田くんが戦えそうな人を集めて作戦会議を開くと言って夢野さんと茶柱さんを連れて行ってしまった。

急に寂しくなった私は何をするでもなく、食堂でぼーっとしている。
モノクマーズが食事を出してくれたが、食べる気になれない。


ルーちゃんを撫でたり言葉を交わしたりしても不安は拭えない。
早く茶柱さんと夢野さんの二人に戻ってきてほしい。
そう思った。



その時、突然、スピーカーから音楽が流れ出した。焦燥感を掻き立てるような、不快な音楽。

「ちょっとトイレ……」
白銀さんが席を立つ。
妙に落ち着かない私はあとに続いて席を立った。


トイレに入った瞬間に感じたのは、違和感。
そこで私は気づいた。
個室の扉がすべて開いている。
白銀さんが入っていったはずなのに……。


動物的な第六感が嫌な予感を告げて、背筋がヒヤリと凍る。
「ルーちゃん……」
思わず漏れてしまった声。早くこの場から立ち去りたい気持ちに反して足は凍ってしまったように動かない。
その時、ルーちゃんがポーチから出たがるように暴れ始めた。

「どうしたのルーちゃん!?」

ルーちゃんを手のひらに乗せると、彼女は鼻を上に向けてしきりににおいを嗅ぐ。その導きのままに辿り着いたのは掃除用具入れだった。


恐る恐る扉を開ける……





「何もないよ……ルーちゃん……」
少しホッとしたのもつかの間、ルーちゃんが私の手から飛び降り、奥の壁をカリカリとかき始めた。

ルーちゃんの反応を見て、私は腕を伸ばし、奥の壁を押した。

カタッ


壁が動いた……!? 脳が警鐘を鳴らす。
ただならぬ雰囲気を感じ取っていたものの、そこで止まらなかったのは、好奇心か。
ルーちゃんに続いて奥に続く道を進む。


「あー、来ちゃったんだ」



前から来た彼女は、そう呟いて、直後、


私は――――



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