昔の映像Part2


「新しい仲間も増えたことだし、ここらで昔の映像を見ようパート2だ」
「何ですかそれ!?」
「前回は王城パートという名の苗字さんパートだったわけだが、今回は誰なんだよ」
「安心しろ今回は純粋に王城パートだ。名前は一切出てこない」
「それは安心だね」
「僕の日常で名前が出てこないなんてありえる……?」
「怖いこと言わないで」
「始めるぞ」




『王城ってさ……苗字とどういう関係なの』
『どうっていうのは?』

「あれ、今回は日常のワンシーンを切り取ってる感じすか?」
「部長しか映ってないですけど、画面が鮮明じゃないですね……」
「スクールバッグにカメラを仕込んでるのか?」
「あ、待ってこれ嫌な予感がする」


『だからさ……いつも一緒にいるじゃん!?』
『そうだね?』
『そうだねって……。ぶっちゃけ苗字のことどう思ってるんだよ』


ごくりとつばを飲み込む音がした。空気もピリッと引き締まり、全員の意識がパソコンの画面に向く。


『愛してるよ』


その迷いのない即答に、動画をまわしている者も、この映像を見ている者も一瞬時が止まる。


『愛……っ』


質問をした者は完全に虚をつかれたようだ。照れたような呆れたような若干引いたような、つまりなんとも言えない声音で王城の言葉を繰り返す。

当の王城はというと、人当たりのいい笑顔を作り、オウム返しのように同じ単語を返す。


『そう、愛』
『…………』


動画をまわしている者は返す言葉も見つからないのか黙り込んでしまった。
それはそうだろう。この映像を見ている宵越たちでさえ何も言葉を発することができずにいるのだから。


『あ、名前から電話だ。そろそろ部活行かないと』


王城は自分の鞄を探りスマホを取り出す。電話に出ようとしたが、ふと指を止めた。この間にも電話は鳴り続けている。


『あとさ、名前を好きでいるのは構わないけど、手に入れようと思ってるなら止めておいた方がいいよ。絶対に無理だから。ごめんね』
『なっ……』


挑発とも取れる言葉を言い放った王城は、相手が反論すら浮かばないくらいの確信を持って満面の笑みを浮かべている。


『もしもし名前? ごめんね、すぐ向かうから』


そして、愛しい名前からの電話に出ながら歩き去っていった……。




「「……」」

「うわー、この時の、撮られてたんだ」
王城以外誰も口を開こうとしない。名前に至っては顔を真っ赤にして蹲ってしまっている。

「なんていうか……」
ようやく口を開いたのは宵越だった。ふうと息を吐き天井を見上げる。
「部長も大変なんだな」
「ん? 何が?」
いろいろツッコミどころがありすぎるが、これが王城の日常なのかと思うと同情や労りの感情が上回った。宵越はこれを自分に置き換えたとき、面倒臭くていちいち相手をしてられないなと心から思ったのだ。

逆に言えば、こんな面倒事の対処を厭わないほど名前を愛しているということ。

相手が強ければ強いほど燃えるのが宵越竜哉という男。
名前を振り向かせることができればひとつ王城に勝ったことになる。
もはや名前に好きになってもらいたいという気持ちよりも王城に勝ちたいという気持ちが上回っており、恋愛の主旨から外れてしまっているということにはもちろん気づいていない。非常に残念な男でもある。

みんなにツッコまれてヘラヘラと笑う王城を見ながら、宵越は静かに闘志を燃やすのだった。




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