お返事。 Cast: いりこ様宅 ラルウェルさん お名前のみ るる様宅 アンゼさん ツミキ様宅 アマーリアさん Ein Kein Meer 一日陽に当たって体にこもった熱が、ぶり返してきたようだった。 しりりと頭がしびれるような感覚が、次第に全身へと広がっていく。 「……ラルウェル?」 指に感じる重みが、今この瞬間がまぎれもない現実であることを伝えてくる。 「……これは」 一体どういうことかしら。説明して頂戴。 何時ものように冷静に問いかけようとしたのだが、思った以上に動揺していたらしい。言葉が胸の奥で引っかかったようになって、代わりにわずかに顔を伏せて、一つ小さく息を吐き出した。 「…………ダメ?」 上から聞こえるラルウェルの声が、急激にしぼんでいく。きっと顔をあげれば、雨に濡れた子犬のようにしょんぼりとした表情が見えるのだろう。 けれども相手の心音は、先ほどと変わらず力強く、普段よりも早く、打っている。その脈打つ音と暖かな胸、背後から聞こえる潮騒に、少しずつ冷静さが戻ってきた。 一つ深く息を吸い、呼吸と意識を整える。 「……ラルウェル。いくつか、言わせて頂戴」 徐に顔をあげ、トゥルームは紅を引いた唇を開いた。 「良い事?まずは、前々からそういったそぶりを見せなさい。貴方はいつも唐突に過ぎるわ。アンゼやアマーリア、他の人には相談をしたのかしら。ひと月で準備を整えるとなると、周囲の人も大きく巻き込むことになるのよ」 指輪を準備した時点で、誰かしらには相談していたのでしょうけれど。そう思いながらも、ぽかんとした表情のラルウェルをよそに、トゥルームは言葉を続ける。 「それから、……そうね、三つほど。 一つ。私は貴方より 10も年上。 二つ。まだこれからも、研究と仕事は続けたい。 三つ。料理はまだ修行中」 少し身を起こし、相手の眼前に指を立て数を示す。咄嗟に出てくるあたり、自覚はなくともいつも頭の片隅で考えていたということだろうか。 「…………それでも、良いのかしら?」 不意に言葉尻が、揺れた。 深い海のような、ラルウェルの深い青の瞳が、月光を受けて輝いている。 [目次] [小説TOP] |