3.静かに枯れた村に

 静かに枯れた村に、丸い月が踊る。祭りの夜、月も忍びでやって来よう。雑木の机が並ぶ中で巫女が一人舞っていた。囃し方は夜の生物たち。炎を写した金の衣がよく似合う。よく似合うが誰一人その巫女を知らぬ。本当に神が祭りを見に来たのか。後日そうした囁きが聞こえたほどの、それは見事な役者だった。
「この巫女の踊りは出鱈目もいいところ。」
 それも気に留めぬ人々に苛立ちを見せたリエンが思わず吐いた事実。クロだけがいつも耳を傾けて。

 この村の星祭が開かれるのは、寒い夏の日のような、凍えない雪の日のような季節の戸惑いがあった日だそうだ。気持ちの緩みのまま星を見れば、精神に蛇を飼うものは蛇が空を埋め尽くし、たくましく夢見る者には幸福な天国を見ることも出来る。他の地では精神の安定を目的とした祭りであるとも言う。別名を夢見の儀。
 日常が許した非日常。夢見の夜。未だ夢に染まらぬ子等二人に巫女の目が向く。
「あなた、だ。黒髪のひと。見付けた。」
巫女は深々と一礼。儀式の終わりを告げてさっさと輪から抜ける。動きにはこなれた手抜きがあった。しかしそれを知る人はいただろうか。みな、星灯りに酔い始めているというのに。
村人の波を小舟がかき分ける。優雅に早足に。衣装の飾り布は真っ直ぐな進路の軌跡を描き、煤被りのランプを目指して暗がりに消えた。祭りは進んでいく。子等の夢が岸辺を離れる時間が近い。


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/ぱらり→



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