エル・ディアブロ
あの日から私達は週に一度一緒に酒を飲むようになった。他愛もない話を肴に何時間も話していられるのは彼と知り合ってもう数年という時の長さのおかげでもあるのだろう。
「それ新しいヤツ?」
「うん! 期間限定だって」
こういうの試してみたくなるんだよねと言うと美味しいのォ? と尋ねられる。
「美味しいよ、飲む?」
「ンじゃ貰う」
私の手から離れ荒北の手に渡った缶を眺めていると、あ、と小さく声が漏れる。
「ア?」
「あ、ううん、なんでもない」
そォ? と不思議そうな顔をしつつもこれ美味いねェと彼は笑う。
「なんか気になることでもあったァ?」
少しおいて彼は口を開いた。気になるよね…。私は躊躇いがちにゆっくりと言葉を紡ぎだす。
「いや、その……間接チューだなぁって気づいて…」
言葉に出すとやっぱり恥ずかしい。俯き気味の顔を上げ荒北を見るとほのかに顔が赤くなっていた。
「荒北、顔赤いよ」
「ウッセ! 酒のせいだヨ!!」
一気にビールを煽りガシガシと頭を掻き毟る。少しだけ気恥しさは残るものの照れ隠しをする荒北が見れたから悪いものではなかったかなと私は薄く微笑んだ。
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