鍵盤と兄と彼と4
「遊園地…!」
「ほらしっかり帽子被っとけ。
有名人なんだから」
「もう…めんどくさい…」
「騒がれた方がもっと面倒だろう?」
「帽子嫌いなのよねー似合わないし!」
ムスッとムクれる美織の頭をポンポンと撫でて景光が笑う。
「大丈夫。
ちゃんと似合ってる可愛いよ」
「ほんとに?」
「俺が嘘をついたことあったか?」
「いっぱいあるけど?」
そう言って美織は観覧車を見上げる。
ばつが悪そうに目を逸らす景光に降谷は呆れつつ、人のこと言えないな、と黙って自身も目を逸らした。
「なに乗る?」
「美織が乗りたいものでいいよ」
「それっていちばん困る答えだよね。
じゃあまずジェットコースターかな〜」
「はいはい…並んでるな…」
「マジじゃん…平日なのに…」
遊園地の目玉、ジェットコースターは長蛇の列。
「並ぶ前に飲み物買わないか?」
降谷が誘い景光をおいていこうとする。
が、がっしりとつかまれた降谷の腕はギリギリと締め付けられる。
「行くんなら全員で行かないとな。横入りはマナー違反だ」
にっこりとそれはそれはきれいな笑顔で笑う景光に降谷はどうにか腕から手を抜こうとするがさすがの現役警察官。
握力が一般男性の比ではない…今限定で通常時の握力以上が出ているのかもしれないが。
「そうだね…あ、私このパンフのこれ、これのみたい!行こ!」
気づいてるのか気づいてないのか。
二人をおいて先に歩き出す彼女に慌てて二人で歩を進める男たちは滑稽に見えた。
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