異次元の狙撃手19
銃撃戦が激しく、誰も身動きが取れずにいる。
陣平さんは子供の確保で動けない。
蘭ちゃんは園子ちゃんの介抱。
ジョディ先生とキャメルさんは物陰で警戒。
だったのだが、キャメルさんが突然飛び出し注意を引いた。そちらに銃口を向けたケビン吉野の背後にはジョディ先生。
脳幹を撃ち抜ける、かと思えば彼はボタンを押した。その後第一展望台が揺れ、電気が消える。
あたりは真っ暗で何も見えない。
やられる訳には、いかないよねぇ…
暗闇に乗じて逃げるだけでなく、完全に制圧する気。
暗視ゴーグルを使用したのか的確に銃を撃つ。
胸ポケットには心許ないペンライトだが、可能性はある。その時、ピーーーーーッとモスキート音が耳を劈く。
なるほど、考えたわね…
子供たちが時計型ライトをケビン吉野に投げつけた。
暗視ゴーグル越しに見た強烈な光に目が眩み、歩美ちゃんから手を離した。
逆上した彼は銃を乱射する。が、「みんな!逃げて!」と声を上げて蘭ちゃんが走った。
「ダメよ!蘭ちゃん!」
拙い、と私も合わせて飛び出す。
「っ美織!」
遠くで陣平さんの声が聞こえた。
一発の弾丸が私の腕を掠めると共に蘭ちゃんに覆いかぶさる。見た限り怪我はない。
「蘭ちゃん、動かないで…」
彼女の横に座り、耳を澄ます。ここまで近ければ、靴音が聞こえるはず。方角はだいたいわかっている。それに、さっきより暗闇に目が慣れてきた。
胸ポケットからペンライトを取り出す。
コツリと消しきれない靴音が鼓膜を叩いた。
ペンの上を捻り、最大出力にしてペンをノックする。
パッと光がピンポイントでまたケビン吉野の顔を照らしだした。
また暗視ゴーグルを付けているなんて、馬鹿ね。
「ぐあ、があぁぁぁ!!!
この、クソアマァァァァァ!!!」
照らしつつ蘭ちゃんに覆いかぶさる。
乱射した銃弾は肩と足に当たる。
目は潰した。あとは、新一。よろしく。
ドンッと外に大きな花火が咲いた。
かと思えば、乱射していた銃が宙を舞う。
視界が回復し、その隙をついた蘭ちゃんが飛び出した。
「…ご愁傷さま…」
エスカレーター付近で吊り下げられたケビン吉野に少しだけ同情した。
「…いってて…」
「おっ前は…!」
「あっはは、オールクリアだから、まぁ許して」
「とっとと病院行くぞ!ったく!
おいお転婆お嬢!お前も一応病院行くぞ!」
「え!?大丈夫ですよ!!」
陣平さんが園子ちゃんにも声をかければ、彼女は彼女でテンションが上がり、アドレナリンでもでたのか平気そうにしている。
「アホか!打撲ナメんな!」
下に降りて車回してくる!と陣平さんが離れた内に携帯を取り出す。
「赤井さん、ありがとう」
「…無理はするなよ」
それは間違いなく、赤井秀一、本人の声だった。
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