朝焼けに 夢に逃れし 哀れなり 想うその袖 色は変わらず
夢を見た。
今はどこにいるかもわからない彼ら。
まだ、この力に対して恐怖が上回っていた頃のお話。
「大丈夫。葵は葵の、その力でほかの誰にもできないことができるんだから。
君の力は特別なんだよ」
研究機関とだけ聞かされた今の居場所に招待された時にそう言って、恐怖を和らげるかのように、そっと彼は頭を撫でてくれた。
ねぇ、私、この力で私だけができることをマスターして、帰ってきたよ。
待ってるって言ってたあなたは今どこにいるの?
ふと、目が覚めた。
夏だからだろう頬を伝う汗がじわりと滲み、気持ち悪さを感じた。
窓の外は微かに明るくなり、綺麗な朝焼けが見えていた。
ねぇ、ねぇ。
ちゃんと会うまで、名前なんて呼んであげない。
朝焼けに 夢に逃れし 哀れなり 想うその袖 色は変わらず
汗に混じった少しの涙は見ないふりをして。
会いたいと思うのは私だけ?
[ 3/17 ][*prev] [next#]