天の原 ふりさけ見れば 春日なる みかさの山に 出でし月かも
夢に見た。彼女は泣いていた。
「どうしたの?」
「…お姉ちゃんが報われない」
あぁ、まずい。彼女は、生霊だ。
「警察は誰も助けてくれなかった」
「…お名前は?」
「みかげ」
「葵!」
外部からの呼び声に意識が浮上した。
「…起きたか」
「…助かったわ」
「えぇ、なにか来ていたようでしたね」
「…生霊よ…」
聞いた名前を口にしようか迷った。
あんな少女のような弱い女性を追い詰めずにどうにかする方法を私は思い到れなかった。
天の原 ふりさけ見れば
春日なる みかさの山に
出でし月かも
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