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あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

夢を見た。
お姉ちゃんが、やっぱり怒っている夢。
無理矢理当時8歳だったお姉ちゃんを犯して、殺した犯人はまだ捕まっていない。

私が怒っているのは犯人へはもちろん、その当時の学校や警察側の対応だった。
母と父は病気と事故でそれぞれ死んでしまった。
私とお姉ちゃんは施設へ預けられた。
実質保護者はいない状態。
だから犯人を見つけなくても、怒る親はおらず、唯一の身内は私だけ。

頑張って犯人検挙を目指してくれた刑事さんもいたが、結局犯人は見つからなかった。
そして学校側は不審者が侵入できたという状況を作ったにも関わらず、お姉ちゃんから誘ったのではないかと仮説を立てた。

許さない。許さない。許さない。絶対に。


──────「…おねがい、みーちゃんを助けて…」

はっと目を開き、麻衣は起き上がった。
時刻は夜中の3時。丑三つ時が過ぎた頃。

帝丹小学校での調査も二日目で、泊まり込む日となっていた。
宿直室は麻衣を含めた女3人で使っている。
というのも、運が悪いことに協力を依頼した霊媒師、原真砂子は別の仕事が今日まで入っており、明日、いや今日の朝イチで合流を予定している為、巫女の綾子、SPR日本支部責任者である葵、そして事務のバイトとして雇われた麻衣が使用していた。
男性陣はジョン、滝川とリン、ナルが会議室を使用している。
こちらも時々手伝いに来る大学生の安原は何やら外側で情報収集をしているようで、それが終わり次第合流。

夢で見た少女は助けを求めていた。
自分への助けではなく、誰かを助けて欲しい、と。
事実、麻衣のこの能力は本来ナルの片割れであるジーンが成長させたもので、彼がいなくなった今は殆ど使用出来ない。
にも関わらず、麻衣の夢へと干渉してきた。
相当思いは強いらしい。
少女のその頭に響いた声で、目が冴えてしまった。

部屋を見渡せば綾子は眠っており、葵の布団はもぬけの殻。
きっとリンとナルとベースで張っているのだろうが、何度も泊まってると言っても夜中の学校は怖い。ただでさえ怖いのに、自分たちがいるのは心霊現象のある学校なのだ。目が冴えたことで余計に周囲に敏感になっているのかも知れないが、とてもではないが1人きりでベースへ向かうなど勇気は持てなかった。

綾子を起こす訳にもいかず、眠れるのを待とうと布団を被り、目を閉じた。

さっきの少女の声が耳から離れない。
麻衣は何故だか体がとても重く感じていた。

あしびきの 山鳥の尾の
しだり尾の ながながし夜を
ひとりかも寝む


母を亡くしてすぐ、長い長い夜を1人で過ごしていた頃を思い出した。

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