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初めての依頼












「すンませんでしたッ!」

バンッと大きな音を立てて頭を下げる谷崎。

「へ?」

「その、試験とは云え随分と失礼なことを」

ズッと茶を飲む国木田。
笑顔で謝る谷崎と驚く敦を見る太宰。
アイスクリームを口に運ぶアリス。

「ああ、いえ、良いんですよ」

謝る犯人役であった谷崎に敦は意外といい人だ、と印象を改めた。

「何を謝ることがある。あれも仕事だ谷崎」

「国木田君も気障に決まってたしねぇ『独歩吟客』!」

カッと先程の国木田の真似をする太宰に青筋を立てる国木田。
それを呆れながら見る新入社員の敦。

「かっこよかったわよ〜」

「私の『今だ!』とどっちがかっこよかった?」
「普通に国木田くん」
「えぇ〜? なんで?」
「うるさい! ともかくだ小僧!」

とばっちりのように怒鳴られた敦は国木田を見る。

「貴様も今日から探偵社が一隅。
故に周りに迷惑を振り撒き社の看板を汚す真似はするな
俺も他の皆もそのことを徹底している。なぁ太宰、森」

問いかけた国木田には目もくれず給仕の女性を見て「あの美人の給仕さんに『死にたいから頚締めて』って頼んだら答えてくれるかなぁ」とうっとりする太宰に「なら私が今ここで殺してあげましょうか。絞殺なんてしんどいのじゃなくてその何考えてるかわかんない頭に鉛玉ぶち込んであげましょうか」と云うアリス。

「黙れ迷惑噴霧器に過激派殺伐女!」

「あっひっどーい! 私がこんなに殺伐発言するのは太宰のせいよ!?」

「だいたいお前らはいつもいつも!」

云い争う三人を横目に「改めて自己紹介すると……ボクは谷崎。探偵社で手代みたいなことをやってます。そンでこっちが……いてっ」「妹のナオミですわ! 兄様のことなら……何でも知ってますの」なんとも言えない二人の雰囲気にダラダラと汗を流す敦。
ナオミと谷崎の……色を付けるとすれば紫っぽいイメージに『兄弟』のような印象は見受けられない。

戸惑う敦に追求するな、と云った国木田に大人しく同意する敦。


「そういえば皆さんは探偵社に入る前は何を?」

その問いに答える者はいない。? を浮かべ待つ敦に太宰が「何してたと思う?」と問い返した。

「へ?」

「なにね、定番(じょうばんなのだよ
新入りは先輩の前職を(てるのさ」

「まぁ、探偵としての洞察力も養えるしね」

「はぁ……じゃあ……谷崎さんと妹さんは……学生?」

「おっ(あたッた。凄い」

「どうしてお分かりに?」

「ナオミさんは制服から見たまんま。
谷崎さんの方も───(としが近そうだし勘で」

「やるねぇ」

「初級編クリアね。じゃ、国木田くんは?」

「止せ俺の前職など如何でも───」

「うーん……お役人さん?」

「惜しい」

「彼は元学校教諭だよ。数学の先生」

不本意そうな国木田に感心したような敦。しかし国木田は思い出したくない、とその話を拒絶した。

「じゃ、私とアリスは?」

太宰は自身とアリスを指差して問い掛けた。

「太宰さんと森さんは……」

と云った処で顔を歪め考え込んだ。

「無駄だ小僧。武装探偵社七不思議のひとつなのだこいつらの前職は」

「最初に(てた人に賞金が有るンでしたっけ」

「えぇ、だァれも(てらんないのよねぇ」

「懸賞金も膨れ上がってるしね」

「俺は溢者(あぶれものの類だと思うがこいつは違うと云う。
しかしこんな奴が真面な勤め人だった筈がない」

「あら、それ私にも言うの? 一応前職同じよ?」

「お前こそ学生か無職だろう」

「ちゃんと働いてましたー! まぁ、親の下でだけどね」

「ちなみに懸賞金って如何程」

「参加するかい? 賞典は今────七十万だ」

ガタンっと勢いよく立ち上がった敦。彼は無一文なのだからか大金すぐ目が眩む。

(てたら貰える?本当に?」

「えぇ、本当よ七十万円」

「自殺主義者に二言はないよ」

勤め人(サラリーマン
「違う」
「研究職」
「違う」
「工場労働者」
「違う」
「作家」
「違う」
「役者」
「違うけど……役者は照れるね」

と照れるね太宰にクスクスと笑うアリス。

「敦くん、私彼と同じ前職なのよ。それも考慮してみなさい」

「え、役者ってアリスさんのことも考えて結構自信あったんだけどなぁ……うーんうーん……」

「だから本当は浪人か無宿人の類だろう?
森は学生か、何処かの家の女中(メイドかその辺だろう」

「違うよ」
「違うわ」

「この件では私は嘘など吐かない」

「ふふ、降参かしら?」

「じゃ此処の払いは宜しく!」

ご馳走様と言い放つ太宰。と、その時谷崎の携帯が呼出音を鳴らした。

どうやら依頼だったようで社に戻ればちょこん、と座る金髪の女性。
それを正面から見据える大人数に口を噤む女性に問いかける谷崎。しかし、そんな彼の言葉を遮ったのは太宰であった。

「美しい……」

スっと手を取り依頼人の彼女に近づくキラキラオーラを放つ

「睡蓮の花の如き果敢なく、そして可憐なお嬢さんだ」

「へっ!?」

「どうか私と心中していただけないだろ───」

スパァァンっドゴッ

頭を叩いた国木田、前から蹴りを入れたアリスに引き摺られ去る太宰に混乱する女性。

「……はぁ、国木田くん、二人にしてくれるかしら?」

「……程々にな」

資料室に太宰を押し込み、戻っていった。

「で? 美人ならば誰でも見境ない太宰さん?」

「盗聴器を仕込ませてもらったのさ。
本気なわけないだろう?」

「どおだか。前科がありすぎて信用ならない」

「本当だよ。アリスがいるのに他の女性に本気になるわけないじゃないか。信頼してくれたまえ」

「ムカつくわねぇ……」

「それで? アリスがこうやってるのなら、要件はこれだけじゃないはずだ」

「……彼女、雰囲気は少し違うけれど、太宰の思った通りよ」

「だろうね。新人さんかな?
私は見たことが無いからね」

「まぁ、そうね。私も顔を合わせたのは辞める直前だったし……向こうは気づいてないけど、龍之介の部下よ」

「成程ね。じゃあ、戻ろうか」

「でもね、太宰が無傷で戻ったら不審じゃない?」

「へぶっ!?」

パァンッといい音を立ててアリスが頬を打った。

「あと何発欲しい?」

「……もういらないです……」

「次からは、気をつけてね?」

「……おやおや、嫉妬かい?」

ニヤリと笑った太宰。それにカッと顔を赤らめたアリス。

「そうよ! 悪い!?
綺麗な女じゃなくて悪かったわね! どうせあんたの好みじゃないわよ!」

「ふふふ……」

「なに、笑っ「嬉しいのだよ」!」

アリスが異能力を使おうとした時、キィンッと太宰に打ち消される。

「愛する人に嫉妬されて嬉しくない男などいないさ」

「っ……あ、あー、うざ!」

「照れちゃって可愛いんだからぁ〜それじゃ先に戻ってるよ」

*

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