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なんとうるさい2度目の小学校



朝─────

「みぃちゃーん! 朝よー!」

階下から昨年の半ば辺り2階に設けられた美音の部屋へ響く女の声。
その声は日本中の10代半ば以上であれば誰もが知る有名人の声であり、美音の叔母、有希子の声だ。

「ヴん……」

布団を被り顔を敷布団に埋める美音は呻き喉から絞り出したような声を発するが動こうとはしない。

そんなとき、

ドッ!!

と彼女に上から勢いよく何かが落下した。

「グェッ!?」

「みお姉朝だぞ! 起きろ!」

と少年の声が耳に入る。

言わずもがな、有希子の息子で美音の従兄弟の工藤新一。
後の高校生探偵だ。

「うぐ……しん……いちぃ……
わぁったから……どいて……」

「ちこくするぞ!」

「小学校なら遅刻しても良くない……?」

「バーロー! ダメにきまってんだろーが」

「みぃちゃん? 起きてるのー?」

キイッと少々高い音を立て扉が開いた。
決してこの家が古い訳では無い。
家主がこだわり、家の扉やその他諸々アンティークのものを集めたりした結果だ。

「起きたいんだけど……新一どけてくんない……?」

「あら! ほんと! しんちゃん! 女の子の上に乗るなんて20年早いわよ!」

「注意の仕方に関して深読みした方がいいのかな!?
20年早いじゃないよ!?」

「でも大切なことよー?」

「教育にめちゃくちゃ悪いよ!
そこは女の子の上に乗るもんじゃないでしょ!?」

「えー」

「えーじゃないよ!
4歳児に言っても通じないし!」

「でもみぃちゃんが4歳の頃は分かってたでしょー?」

「ソレとコレは話が別だね!?」

と言い争っているも有希子の手にきちんと新一は回収されている。
そんな中、コンコンッと開き切った扉に意味の無いノック─────恐らく自身の存在を示すためのものだが────を鳴らした家主であり、有希子の夫、新一の父、工藤優作が立っていた。

「仲がいいのも結構だが早くしないと美音だけじゃなく新一まで遅刻してしまうよ」

と、手に持った新一の通園カバンと美音のランドセルを少し持ち上げて示した。

「いっけない! もうそんな時間!?
みぃちゃんご飯食べちゃって!」

「やっばい! 着替えるから新一出てって!」

「べつにみお姉のはだかなんかみてもだだだだ!?」

と有希子に下ろされ減らず口を叩く新一の頬を引っ張る。

そして10分もしないうちにダイニングへつき5分で玄関へ走る。

「行ってきます!」

「いってらっしゃーい!」

─────さて、珍しく第三者目線での地の文だったけどここからはいつも通り私が地の文をします。

あ、もしかして第三者のほうがいい!?
残念! 今回は終わりです! いつかする! 多分!

3分ほど歩いたところで

「おはよー美音ー
今日はゆきちゃんとこから?」

「そ、今回は2ヶ月くらいかな」

「マジ? 長いね」

後ろから声をかけてきたのは幼馴染み、城ヶ崎玲香。

「玲香んとこは?」

「さー?単身赴任とか言ってるけど社長がする訳ないじゃん?
愛人としっぽりしてんじゃない?」

「うわ! めんどくさ!」

「お陰でママまで彼氏連れてきてさー
パパって呼ばなきゃ機嫌悪くなんのー
ったく、ドコの昼ドラだっての!」

「大変だねそっちも今」

「ほんと、ラブラブな美音んトコの親とかゆきちゃんとこが羨ましいわ」

肩を竦める玲香に同情する。
かわいた笑い声しか出なかった。

そしてまた2分ほど歩いたところで

「はよー」

「おはよ」

と香奈と友里恵が合流する。

「ねー、今日の算数抜き打ちテストやるらしいよ」

「マジ? ダルイ」

「えー? どこ情報よそれ」

「昨日よっせんが私にポロッと」

「よっせん脇甘いなほんと……」

「ぐあー!
焦ってよ! なんで三人とも余裕そうなの!?」

「いや、別に今やってる範囲で抜き打ちしても困んないし」

「それ」

「流石に小4の算数ならマスターしてるから」

「きいい!!! 勉強できる奴め!!!」

私は勿論二回目なのでチートなのだが、友里恵は何だかんだ素で勉強ができ、玲香は塾に通っているので勉強ができる。

しかし、香奈は水泳の成績は上場であと二、三年すればジュニア五輪も夢ではないところまで来ているが如何せん勉強はさっぱり。

「香奈はいい加減勉強しなよ」

「泳いでたいもーん!」

「かわいこぶんな。可愛くねーから」

「え、酷くない!?
本音を言えばギリギリで生きていたい」

「ギリギリすぎるよ」

ブロロロキキッと綺麗に私たちの隣に停車した外車の後部座席から顔を出したのは、鈴木財閥のお嬢様、鈴木園子だ。
そう言えば先日遊びに来てたな。

「みおんおねぇさま! おはようございます!」

「園子ちゃんおはよー」

「あれ? 鈴木財閥の」

「あ、れーかおねえさまも!」

「あー財閥同士知り合い?」

「まぁパーティも被るしね」

「はい! と、いってもれーかおねぇさまいつもあねきといっしょにいるじゃないですか 」

「年は綾子ちゃんのが近いから」

ふと、大変なことに気づいた。

「ところで、おねえさまがた、じかんはだいじょうぶなんですか?」

「……車の園子ちゃんがここにいるってことは、」

サッと全員血の気が引く。

「もうはちじにじゅうごふんですけど」

「はぁ!? あと5分!?」

片道工藤邸から10分なのに!?
家出たの8時15分じゃん!?
もう着いてないとおかしいじゃん!?

「は、走るよ! 」

「あっ待ってよ!」

「友里恵早く!」

「がんばってくださいねー!」

と追い越す黒塗り外車。

くっそ!!!!! お嬢め!!!!!!

こういう時ってほんと、体育の成績順みたいなところあるよね。

「見えた! 門開いてる! ラッキー!」

「うわ!? 校長たってるけど!?」

「校長ならセーフ!」

閉めようとしていた校長が少し開けて待っててくれていた。

「ありがとー!!」

あ、校長親指立ててる。

「GOOD LUCK」

え?発音いいな。

校舎へ入り上靴を履き替え2階の4-Aの教室に駆け込む。

「セーーフ!!」

チャイムはまだなってなかった。

「うるせぇぞ! ギリギリ四人娘!」

「よっせんおっはー!」

「よっせんこれはセーフでしょ!」

「担任権限で遅刻にしてやろうか」

「でも校門にいたの校長だからァ〜」

「校長が証人って最強説あるわ」

「職権乱用するのは醜いゾ☆」

「腹立つな!! さっさと席つけ!」

「「「「はーい/うぃー」」」」

よっせんこと、吉田澄晴先生は私達4-Aの担任。
24歳の教師二年目。
お母様やら奥様方からの人気も高くイケメンタイプ。
ツッコミ属性で苦労人。
校長とは飲み仲間らしいけど本人はそんなに飲めないらしい。

「白樫! おまえ今日日直だぞ!」

「えっうそやっべ」

なんとうるさい2度目の小学校

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