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原作改変とはその原作のファンからすれば邪道であり、最も忌み嫌うことである。

その原作を改変することで物語の大部分が変わり、重要なことがズレ、結末が変わることだってありうる。

物語の世界ならば。

「とうさん」

「どうしたんだい?」

「父さんがもし、映画をとる時に脚本家が原作の良さを壊す的はずれなものを書いてきたらどうする?」

「当然、なぜそう書いたのか意図を聞くよ。
しかし、その脚本で魅力が無くなるのならば即座にその脚本家を下ろす」

「じゃあね、その作品の、死ぬはずだった人を生かした場合は?」

「その人が生きることで、物語が面白くなるなら、私は生かすのもいいと思うがね」

「……結末が、変わるかもしれなくても?」

「結末というものは、その過程があってこそのものだ。結末が変わっても、私はいいと思うものを撮る。
だが、この現実のことは簡単には変えられない
そのストーリーを客が面白いと思うかは決められないんだ」

私の意図の読めない質問に、父さんは淀みなく答える。

「なら、現実の、決まった未来を変えてしまうのはいけないこと?」

「……決まった未来など果たしてあるのだろうか?
この世は不思議と謎に満ちている。
誰かひとりの行動で五年十年先のことが変わる。
バタフライ効果、というものだが、例えば、美音、君が生まれたことすら何かに影響を与える。
出会った友人、教師、彼らの人生に必ず影響を与えている。
それは巡り巡って出会わない人の人生にも影響を与えているんだ。
もう何かが起こっていても、決まった未来など存在しない。
紙面上の物語じゃないんだ。
確かに、決められた未来は変わらないことだってある。しかし、それはそれまでの過程で、その道以外に未来の分岐点が無くなり確定したことだ。
無論、その分岐点などはそれまでにいくらあるのかも分からない。
ないのかもしれないし、無数に存在してどうにでも出来るかもしれない」

紙面上の物語ではない。
そうだ。
当然だ。
ここは現実で、彼は、この世界に、現実に生まれた人間。
物語などと思っているのは私、ただ1人。

「……その分岐点は、あるべき姿に置くべきなの?」

最後に、ひとつ。

「分岐点はあらゆる未来に繋がる。
君の人生だ。後悔しない選択をしなさい。
決まった未来など、有り得ない」

『未来を知っている』ようなことを聞いても気味悪がらず、応える父。

分からなくても、この世界はどんな方にも動く。
私は、思っていることがある。

どんなに遮り、守り、退けても、これから生まれる可愛いだろう従姉弟は、きっと過酷な未来を背負うこととなるだろう。
ならば、私は精一杯、知る限り彼らを守ろう。
死ぬ運命を持つ彼らをも、きっと私が守ってみせよう。
血塗られる未来を白く変えてみせよう。
きっと、私がここに転生したのはその為だ。
この命を無駄にしないためにも。

例え、この命を賭しても、従姉弟へ力を貸してくれる彼らを。

悩み事は相談しましょう

そうやって決意した4歳のとある日。

偉大な父は、私を救った。

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