鮮血色のビターチョコ
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「あれ、流輝さーん!」
呼び止められる声に振り返るとそこには帝丹中学の制服を着た少年と少女がいた。
「あら、新一くんに蘭ちゃん。今帰り?」
「はい。流輝さんはお仕事今日は終わりなんですか?」
「ええ、珍しくやることなくってね〜」
男の子─────工藤新一くんは世界的なミステリー小説家、工藤優作を父に、日本で女優として活躍し、20歳の時に電撃結婚し、電撃引退した名女優、藤峰有希子を母に持つ少年。
女の子──────毛利蘭ちゃんは新一くんの幼馴染で法曹界では知らぬ人はいない法廷の女王、妃英理を母に持ち、父親、毛利小五郎は無名ながら探偵として事務所を運営し、そこに住む少女。
なんともキャラが濃いが、彼らに出会ったのは近隣に住んでいることと、妃先生に事件の調査の協力を頼まれたことからだった。
警察関連の人間と関わるべきではないのだが彼女は夫と違い、かなり頭のキレる女性。
それこそ、新一くんにも並ぶ程。下手に逃げれば怪しまれることは必須。
そうならないために軽く付き合うくらいがちょうど良いだろう。と、思ったのがきっかけだ。
日本でのは私は相良流輝。
米花町のマンションの自宅から程近くに構えられてる会社の経理、事務を担当するOL────という設定である。
勿論相良流輝なんていう名義の戸籍は日本に存在しない。
そこを警察などの協力によって調べられるとアウト─────
しかも新一くんは父親譲りの推理力を持っている、下手な行動をすればバレかねない。
まぁ、中学生に悟られるほど、私も鈍ってないはず、だが。
それに彼よりも日本の警察、特に過去の私の事件を知り、捜査に関わった警察官たちや、その件について私の顔を知る警察庁、公安警察。
そちらの方が今は気になる。
バレればきっと、タダでは済まない。
「いつも流輝さんバタバタしてるもんな」
「そうよー。社会人は忙しいのよー」
「大変ですね……」
「ええ、まぁね、ほら、もう帰りなさい。
暗くなるわよ〜」
「へいへい」
「はーい」
仮初の日常騙すつもりがない、なんて言うのは
責任逃れ以外の何物でもない。
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