鮮血色のビターチョコ
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一人の家が嫌いだった。
今も昔も、家族があの女に壊される前も。
独りでいるのが嫌いだった。
何かがあったわけじゃない。
ただ、独りがひどく怖くて、ずっと彼の後ろをついていた。
全てが壊され、大切なものを奪われ、引き取ってくれるという義母と義父に連れられてアメリカに行く時、何もかもがどうでも良くなったのに。
ひとりでいると、守ってくれた彼を思い出す。
彼は元気だろうか。笑っているだろうか。
正義感が強くて、見た目に反して真面目だった、暖かい手をした年上の男の子。
きっともう会うことはない彼を思い出すから、ひとりは嫌い。
みんなが私を見てくれていたのに、どこかでずっと思ってたんだ。私は1人だって。
こんな汚い私を、誰も知らない。
誰にも本性を見せてこなかった。
強がって、ひとりで抱え込んで、勝手に離れて勝手に逃げて。
傷つくことが怖くて、誰ももう、私の中に入ってこないように、鍵を掛けた。
怖いものなんてもうない大切なものを作らなければ、傷つくこともないでしょう?
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