こねた | ナノ


織姫と彦星(青黄)

「黄瀬、見せてみ」
「えー、なんで」
「別にいーだろ、減るもんじゃあるまいし」
「願い事は他人に言ったら叶わないって言うじゃないスか」
「じゃあオレが勝手に見る」
「はいはい、…じゃあオレも」

「……おまえ、変わんねえよな」
「そういう青峰っちもね」
「来週、ストバス行くか」
「賛成ー!」


「つーか、なんか意外」
「あ?」
「青峰っちが短冊に願い事書くなんて」
「さりげなく失礼だな、おまえ」
「桃っちや黒子っちも同じこと言うと思うけど?」
「…、ちょっと黙っとけ」
「はーい」


「外、まだ降ってんな」
「…今日は一年に一回きりのチャンスだってのに、生憎の雨だなんて、かみさまも酷なことするよね」
「かみさまなんていねえんだろ、結局」
「そう思う?」
「そんなのがいたとしたら、オレらはもっと楽に一緒に居れたんじゃねえの」
「……どうっスかね」
「違うか?」
「わかんない。でもね、ひとつ、感謝してることがあるんス」
「感謝?」
「うん。あの日、オレの頭にボールがぶつかったことに、感謝してる。それが偶然でも必然でも、運命でも、そうでなくとも」
「…なあ、黄瀬」
「うん?」
「あれ、わざとだったって言ったらどうする?」
「なっ、」
「冗談だけどさ」
「あ、あんたなあ…」
「なあ、どうする?たとえ話だよ」
「…あれが仕組まれたことだったとするなら、確かにかみさまなんていないのかもね」
「もしいたとしても、オレはかみさまなんて信じねえから、結果的に意味ねえな」
「なんスかそれ」


「もしオレたちが織姫と彦星だったら、今日は一年の中で最悪の日になりそうっス」
「なんで?」
「だってせっかく会える一年に一度の日なのに。雨降って、会えなくて、綺麗な星も見えなくて。最悪じゃん」
「そんなルール破っちまえばいーだろ」
「へ?」
「一年に一回とか、そんなの我慢できるわけねえ。会いたいから会う。恋人同士が会っちゃいけねえなんてあんまりだ」
「…青峰っち、横暴なのかロマンチストなのか…」
「あ?」
「…うん。いやでも、…その通りっスね」
「おまえが織姫でも、天の川なんざ飛び越えて会いに行ってやる」
「ふはっ、かっけえー」
「…お、雨止んできたんじゃねえか、これ」
「マジっスか!おわ、ほんとだ、雲が晴れてく!」
「…黄瀬ぇ」
「なに、…うわ、っ」

「はは、すっげえ、絶景」
「あ?」
「青峰っちと、綺麗な星空しか映ってない。すごいっスよ、これ」
「へえ。オレも見たい」
「よ、いしょ…っと」
「…おー、すっげえな」
「いま見えてるのは、オレと星空だけっしょ?」
「ああ。…今までに見た空の中でいちばん、綺麗だわ」
「はは、そりゃどーも」



星に手が届く、その瞬間


2013.07.07

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2013/07/07 00:00

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