choke on kiss

(3/4)

「僕もなんぞ形に残るもんあげりゃよかったかいな〜」
「…なに?」

急にトットリが大きく独り言を呟いたので思わず反応を返した。
彼は天井を眺めながら右手でチョーカーをいじっている。
もう見るのには飽きたらしく、鏡は元の位置に戻っていた。

「覚えとらん?士官学校ン頃一回だきおめぇの誕生日にプレゼントやっただらぁ」
「ああ…」
「ミヤギくんがえっと怒りんさったけ、もうやらんなったけど」
「懐かしおすなぁ」

16の誕生日に、アラシヤマはトットリにプレゼントをもらったことがある。
中身はお菓子の詰め合わせだった。
そしてそれを渡すのに、トットリは二人きりで会いたがった。
周囲の視線を気にしていた彼は、アラシヤマと会うことを誰にも知られたくなかったのだ。
しかし嘘をついてまでそれを隠そうとしたせいで、彼は親友の怒りを買い、その後も散々怒鳴られていた。
よく覚えている。初めてクラスメイトにプレゼントをもらった記念日だ、忘れる訳がない。

「こいもミヤギくんの前ではつけられんだらぁな」

見えもしないのに胸元に視線を落としてトットリが言った。
釘を刺したつもりなのか、それとも惜しんでくれたのか。今日の彼は二重にとれる言葉ばかり寄越してくる。
表情からは読めない。浮かべる色が単純すぎて、賢すぎるアラシヤマには読めなかった。
これからもそうやって巧妙に隠していくのだろうか。

「二重生活」
「別に好きで来とるんとちゃうし」
「なら何でここにおりますの」
「おめぇが一人で寂しそうだけ仕方なく」
「そらすんまへんなぁ、気遣てもろて」

面倒くさそうに返事をすると、彼はムッとして寝返りを打った。
丸まった背中はもう何も語らない。
首元をいじっているらしい金属音だけがカチャカチャと部屋に残った。


しばらくすると、トットリは起き上がって脱いでいた上着を手に取った。帰るのだろう。
結局彼はベッドでごろごろしていただけだった。
どうせならケーキでも用意しておけばよかっただろうか。そんな義理はないけれど。

ぼんやりとそんなことを思いつつ、アラシヤマは視線だけでトットリを見送った。
ソファに腰掛けたまま沈黙し、去っていくであろう背中をみていた。
しかしトットリはドアノブに手をかけたところで、急に踵を返しアラシヤマの前までやってきた。
そして、どうしたのかと問う前に、アラシヤマの唇は彼のそれに塞がれてしまった。



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