choke on kiss
(2/4)
トットリはベッド脇のサイドテーブルから勝手に手鏡を取り上げると、また寝そべって首元を眺め回した。
「似合うだらぁ?」
「へぇ」
「でも制服には合わんなぁ」
「気に入らはった?」
「んーまあまあ」
トットリはアラシヤマの困惑した表情に気がついたようだが、それを気にすることはなかった。
何の気遣いもみせず、ただ鏡を覗き込んでいる。
しばらくのあいだ沈黙が流れた。
「ミヤギはんは…」
「うん?」
「まだ遠征やったっけ」
どうにも居心地が悪くなり沈黙を破ってみたが、自分で地雷を踏んだような気がして、アラシヤマはしまったと思った。
トットリと二人でいるとついミヤギの名を口にしてしまう。
それは大抵トットリに対する意地悪なのだが、今のは完全な墓穴だ。
今日はあの金髪を意識したくないし、思い出させたくもなかったのに。
「帰ってきとったら僕ここにおらんがな」
トットリはきょとんとした顔で答えた。
彼はミヤギがいない期間だけ、よくアラシヤマの部屋を訪れる。彼は大変な寂しがり屋なのだ。
しかも仲の良い同僚なら他にいくらでもいるのに、他の部屋には立ち寄らず当然のようにここへ来る。
それは単に、アラシヤマが彼にとって気を使わなくていい存在だからだ。
色々と都合がいいのだろう。誰も寄り付かず、構ってこず、かと言って一人ではないこの空間が。
彼が今日ここへ来たのも、誕生日に親友が傍にいない寂しさを埋めるためなのだ。
八つ当たりしてやろうと思って来てみれば意外にもプレゼントが用意されていて、それで機嫌がいいだけなのだ。
そんな当たり前のことを突きつけられ、アラシヤマは自嘲するように小さく息を吐いた。
ため息に気付いたトットリはちら、とアラシヤマに視線を投げたが、すぐに首元の真新しいチョーカーに意識を戻した。
またしばらく無言の時間が訪れた。
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