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思わず手に持っていた携帯電話を取り落とす。
かしゃりという音と共に床に落ちた携帯からは恭平の慌てたような声が聞こえるがそれどころじゃない。
冷たい声とそれ以上にぞっとするような冷たさを背後に感じる。
あの双子の兎ではない。
―だって、背後の誰かからは冷たさと一緒に悪意も感じるんだもの…
絶対振り向いてはいけない、一刻も早くこの場を離れなければ。
だけど体は先程走っていたせいかだるいし足は床と一体化してしまったのかのように動かない。
―逃げろ、はやく逃げろ…
頭がガンガンする。心なしか呼吸も苦しい。
はやく、早く逃げなければ。
でも体が動かない。
―うごけ、はやくはやくはやくはやく…
念が通じたのか足を一歩踏み出すことが出来た。
ようやく離れられると安堵したのも束の間。
不意に感じた違和感。
左側が妙に冷たい。
ぎしぎしと首を動かして左腕を見る。
私の腕を白い手が掴んでいた。
そして急に体が反転する。
「っ…!?」
目の前にあったのは、赤い瞳。
けれど、その綺麗な赤い瞳はただひたすら暗く冷たい。
「……」
目の前の人物はなにも言わない。
ただ私の腕を掴んでいるだけ。
振り払って逃げればいいのに体はまた金縛りにあったようになっていて。
冷や汗がたらりと流れる。
どうにかしてこの状況を打破しようと口を開きかけた時だった。