後書き

及川連載、おもしろき。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

現段階では一つの連載物としての話数が他よりもとても多く、今後も当サイトの中ではかなり長いお話の一つになるのではないかと思われます。

まず、こちらのタイトル、「面白きこともなき世に面白く住みなすものは心なりけり」ですが、高杉晋作さんの辞世の句になります。簡単に意味を紹介すると、面白いこともない世の中を面白く生きるためにはどうすればいいか、それは心の持ち方である。という感じです。面白く生きてやる!みたいな強気な印象を持たれがちなこの句は、実は高杉さんが詠んだのは前半の〜面白くまでと言われています。その後の住みなすものは〜はそこにいた別の人が添えたものです。高杉さんの面白く生きるためにはどうすればいいんだろう。その問いに「心をどこに置くかですよ」と答えた感じです。強気に見えて実はすごくどう生きるかを悩みながら考えている感じや、二人で詠んだものがこうして一つの歌で認識されていることが、このお話の二人もそういう感じにできればいいなと思えたのでこの歌をタイトルに選びました。

及川さん個人の話になってしまうのですが、これだけこの話を書いた後にいうのもアレなんですけど、私の中で実は一番恋愛から離れた場所に存在しているキャラクターです。原作内でもモテるし、振られている(彼女がいた)描写もあるのですが、その後の進路とか、あまりにも大きすぎる決意と決断力、彼の目標や人生設計などを見ていると何だか「この男についていける人類、いるのか?」みたいな、そんな気持ちになってしまって……。及川さんに限らず、ハイキューの、特にプロ組なんかはバレーにかける熱を理解し邪魔せずにいられる子じゃないとって気持ちになってしまうんですけど、及川さんの場合はそれが本当に強くて、というかこの人恋愛なんかしてる場合じゃなくない!?みたいな気持ちに個人的にずっとなってました。あまりにも真っ直ぐにバレーボールに突き進みすぎている。バレーというあまりにもブレなすぎるものが存在してしまうから、冷たいわけじゃないけど冷たくも捉えられてしまうそんな印象もどこか個人的にあって。彼女はいても心の底から誰かを好きになったことはあるのかなとか、そんなことをつい考えてしまいました。

そんな及川さんがもしも恋愛をするとしたら?どういう子を何をきっかけに選んで、どんな選択をするのだろうか。という考えに至り、自分なりに相手の性格や、どういうところで惹かれてくか、この子をそばに置いてもいい、置きたい、共に歩みたいと思うか、どう歩んでいくのか等を自分なりに考えた結果このお話が生まれました。個人的にどうしても譲れなかったのが精神的に独り立ちしているというか、自分の力で立っていられる子。

書いてて楽しかったところはこことここ!って出るんですけど、難しかったところを聞かれると全55話、全てが難しかったです。オリンピックが関わってくる話はもちろん、アルゼンチンのこととか、なんか全部頭こんがらがりそうになりながら書いてました。日程も。連載の話を書く前から、何話使うとかは置いておいても何年に何が起きてこの話は取り入れる。アルゼンチンリーグの事等を考えて及川が動きやすいのはこの辺り、とか、なんかずっと日にちのことも考えていました。

ちなみに書いてて楽しかったなってすぐに思い出せるのは及川さんが現地の女子中学生に絡まれるお話とか、ヒロインがアルゼンチンに向かうときに本人よりも焦ってる及川さんとか、その辺りです。たくさんあるはずだけど、パッと思いつくのがそこで、あとはなんか色々確認したりヒィヒィ言いながら書いた記憶があります。

お話を書くときに何について調べたかとか知りたいといろんな方に言っていただけるのですが、この連載に関してはなんか本当にたくさん調べたと思います。作中には全然反映されてなかったり、調べた上で書きやすいように変えちゃてるところもあったりするんですけどね。

アルゼンチンの国籍取得方法、期間、実際に取得した人の体験ブログとか資料とか、実際の書類とかも調べました。滞在ビザとかその取得方法、期間も。国籍を日本に戻す場合アルゼンチンだとどのくらいの難しさなのかとかも。アルゼンチンのサンファンに行く方法とか、何時に出れば何時に着くとか飛行機の予約画面ギリギリまで実際に手続き進めながらハラハラしながらやってみたり。ブエノスアイレスからサンファンに行くのも飛行機と電車どっちがいいかとかね。電車は時間はかかりそうだけど、体験談とか写真とか見ていると緑豊かで有名なワインとかも美味しそうでそれはそれで楽しそうな旅になりそうだった!いつか時間ある時に二人でそんな感じの国内旅行とかして欲しくなりました。

選手村での選手の過ごし方とか、同じ飛行機に乗れるのかどうかとか、何日に関係者はラッシュになるのかとか、実際のアルゼンチン選手団は何日に来て帰っていたかとか。閉会式や開会式で海外選手がしてたインスタライブ見てどのくらい普通にスマホいじれるのかとか(笑)他にもアルゼンチンの学生は何年生まであるのとか、ワールドカップとか、バレーボールの国際規定とか、細かいことも色々あります。あとはほぼ反映されているようでいてされてないものばかりです。

好きなシーンやセリフ、たくさんあるんですけど、53話のあの時徹に言われた通りに引き下がらなくてほんっとに良かったぁーって泣いたヒロインを書いた時にここまでやっっっと来たなという気持ちになりました。それをヒロイン視点じゃなく及川視点で書いたのが個人的にお気に入りです。皆さんのお気入りシーンとかセリフもあったらぜひ教えてください。ちなみに拍手や感想等で反響が良かった話は19話の2021年7月26日のお話です。ヒロインとのお話ではなく及川さんの試合のお話だったのが何だか意外で、とっても嬉しいです。あとは38話2018年5月27日の中学生にたかられる及川選手。

入れようとして削った話は、ヒロインと花巻くんがどこで仲良くなったかとかの話。どんな内容にしようとしてたか忘れちゃいましたが、メモを見返すとその話をどっかで入れようとしていた形跡だけある。

裏話もたぶん思い返せばたくさんあるんですけど、これだけ。この連載の表紙ページなんですけど、使用している背景写真は水なんですよね。及川さんの連載だし、これだけ植物の喩えを出しているので葉っぱとか木とか何かの芽とかにしようかなと思っていたんですけど、及川さんにとってのヒロインを植物が育つために一番必要になる水や日光に喩えたいと最初から思っていたので、なんか吸い上げられてるっぽい水にしました。

このお話を書きながら、及川さんって改めてすごい人物だなぁと再確認したんですけど、それだけじゃなくて本当に彼の人気の高さまで再確認しました。たくさんの方が読んでくださり、感想もいただけて、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

今後もこの二人の番外編はたくさん書いていきたいと思ってますので、これからも見守ってくださると嬉しいです。

この後書き内でも言った通り、私個人的にはハイキューで及川さんが一番恋愛から遠いと思ってしまっているので、今後このお話以外の彼の連載はするかどうか分かりません。書けたとしてもなんか、例えば全然違う世界観のパロ系の話とかそういうのになるんじゃない?って感じです。最初で最後の及川さんの連載だと思いながら1話目から書いてきました。とは言っても、あっ書きたいもの出来た!って突然やりだすかもしれないけど。でも今の時点ではそういう気持ちでいるし、自分ではそれでもいいかなと思えるくらいに満足に書き上げることが出来たお話になりました。

この長い連載を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。これからも当サイトをどうぞよろしくお願いいたします。

2022.05.07 栄田


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