「この人かっこいい」


「最近人気のこのモデルの子すごいかっこいい」


お風呂上がり、タオルで頭を拭きながら流れていた音楽番組を流し見し何気なく呟いたそれは、ソファで寛いでいた侑の耳にもしっかりと届いたらしい。「どいつ?」と言いながら彼は眉間に皺を寄せ食い入るようにテレビを見つめる。


「一番左に座ってる子」

「カーッ、なんやねんこいつ、チャラ」

「えっ侑がそれ言う?」


見た目だけなら貴方も負けてませんけど。そんな視線を向けると、放り出した長い足を綺麗に組替えながら「俺の方がかっこええやん」なんて自信満々に言い放つ。


「侑のそういう所がなぁ……」

「は?なん?文句あるんか?」

「何でそんなに喧嘩腰なのよ」

「ムカつくやろ俺が隣にいるのに他の男の話とか」

「うわ」

「俺が居るところではほかの男の話なんかすんな」

「めんどくさっ」

「俺が居ないところでも他の男の話はすんな」

「束縛つよ」


ゲッと顔を歪めてみれば、それを見た侑が更にプンとした表情をしながら頬を膨らませ、「やって、お前のタイプは俺一択やん!」なんて子供みたいなことを言う。そんな自意識過剰すぎる目の前の可愛らしい男の勢いについつい押し負けてしまって、「あーもう、いいよそれで」なんて言って思わず大きく笑った。


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