一番の理解者に相談する


「……聖臣って私のことほんとに好きなのかな」

「っははは!そんなことで悩んでんの!?」


ザワザワと騒がしい昼休みの廊下の片隅で、「佐久早の考えてることがわからないねー。ミョウジさんにわからないなら多分俺にもわからないと思うけど、一応話は聞くよ?」と、聖臣の一番の理解者であろう古森くんは優しく言ってくれた。だから意を決して伝えたのに。

親身に相談に乗ってくれそうという予想に反し、上半身を折り曲げるようにしてお腹を抱え「もっと難しい悩みだと思ったのにそんなことか」なんて言いながらゲラゲラと大きく笑っている。


「こっちは真剣なのに…!!」

「ごめんごめん。どうしてそう思った?」

「……告白したのも、話しかけるのも、連絡するのも、全部私からだし。それに私と話してるよりも古森くんと話してる時の方が楽しそう」

「一番最後のだけは確実に無いから安心して」


まぁ自分から話したり頻繁に連絡したりってイメージはそんなないよなぁと少し困った風に言った後、「それでもあの佐久早だぞ?好きじゃないやつと付き合うこととかそもそも無理だろー」とははっと笑い飛ばした。

たしかにそれはそうなんだけど。でも不安になるものは不安になる。それがまた面倒くさいと思われてしまいそうでぐるぐると思い悩んでいるのだ。そんな私の心の内を察したのか、古森くんは「それ本人に直接打ち明けてみ」とニヤニヤと口元を緩めた。


「無理……嫌われる」

「悩んでる通り元から好きじゃないかもよ?」

「やめてやめて!傷つく!」

「ごめん嘘、大丈夫だって」


もう一度大きく笑いながら「ほらほら、あの怖ぇー顔見てみなよ」と私の後ろを指でさす。それに釣られて振り返った先には、こちらに向かいながら不機嫌そうに顔を顰めて歩いてくる聖臣の姿が。


「あれは何も思ってない男がする顔じゃないよな」


じゃあ俺は邪魔だから消えんね、と去っていった古森くんは、最後に「たしかにわかりにくくて不器用なやつだけどさ、そこんとこもわかってやって」と独特なその眉を下げながら私にしか聞こえないくらいの声で呟いた。

古森くんはやっぱり私よりも聖臣のことをよく解っていると思って、心強いと同時に少しだけ悔しい気持ちにもなる。好きな人と親しい良き理解者。そして良い人。それが古森くんで良かった。


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