「この人かっこいい」


「この俳優さんかっこいいよねぇ、この前ドラマでさ……どうしたの?」

「そういうのがタイプなん?」


焦ったような早口で問いかけられたそれに少しだけ頭を悩ませると、すぐになんとなく彼が考えていることを察してしまった。申し訳ないなと思いながら少し楽しくもなってしまって「そうかも」なんておどけた声を出してみる。

嘘やん!俺と全然ちゃうやんそいつ!そう言いながら頭を抱える治くんは、ゴンッと激しい音を立て机に額をうちつける。そして次の瞬間今度はバッと勢いよく顔を上げ、ゴクリと喉を鳴らしながら真っ直ぐにその視線を私へと向けた。


「ツムもよう言うとるけど俺も顔はええやん」

「……うん」

「絶対に浮気もせん。超一途や。なるべく泣かせん。めっちゃ優しくする。料理もこれからもっと出来るようになるし、全国行くくらいバレー強いし、背もこいつより高いし、お前のこと不安にさせるような女優とかモデルとかも周りにおらん」


それにこいつより俺の方がお前のこと好きやし!!と、教室に響き渡るくらいに大きな声を張り上げた彼に耐えきれず吹き出した。こんな知り合いでも何でもない俳優にまでここまで対抗してくるなんて、本当に可愛い人だ。そう思っていると、「せやから俺だけ見とってな」と少し心配そうに言ってくるから、「わかったから。大丈夫だよ」と安心させるように笑顔で大きく頷いた。


前へ 次へ


- ナノ -